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○ 賃金・単価引き上げよ 第61回建設・住宅企業交渉

現場から行動起こし若者が入ってくる建設業に

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前進をかちとると集会で決意し交渉にむかった

 全建総連関東地方協議会連絡会は4月23、24日に第61回建設・住宅企業交渉を行ない、のべ982(東京土建から298)人の仲間が参加し、建設労働者の賃金確保・労働条件改善を求めました。
 両日とも午前中は豊島公会堂で集会を開き、午後からの交渉の意思統一を行ないました。基調報告では、窪田全建総連中執(東京土建副委員長)が、国土交通省は2015年度も公共工事設計労務単価を引き上げ、技能労働者への適正水準の賃金確保を建設業界団体に指導しているにもかかわらず、大手建設資本は大幅な利益増を現場労働者に還元していないと指摘し、現場から行動を起こして、要求をかちとろうと呼びかけました。
 現場からの報告でも「賃金は上がらず、工期など働く条件も改善されていない。若者が入る建設業にするため、交渉で要求を前進させよう」と訴え、参加者は決意を固め、交渉にむかいました。


賃上げの具体策示せと迫る

詳しい賃金調査約束
民間も建退共貼付/大和ハウス

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大和ハウスとの交渉

 【共同デスク・伊藤記者】交渉は野老団長(千葉土建)をはじめ42人、大和ハウス5人で行ないました。
 現場労働者の賃金の具体的な引き上げ策を「直接雇用する事業主の問題」とする大和ハウスに、それでは賃金も上がらず、若者も入らぬと迫ると「休みがとれるなど労働環境整備を強化する」。
 しかし組合は、大和ハウスと組合の賃金調査では5千円もの差がある実態を示し、立場が弱い2次、3次が目標を持ち、要求できるよう大和ハウスが考える「適正な賃金額」を示すよう求めると「賃金額は示せないが、適正価格で発注している」と回答。
 そうであれば、どこで賃金が止まり、原因は何かを次回の回答で強く求めるとともに、賃金調査において、サンプル数、現場数、最高額、最低額をつけ加えることも約束させました。
 標準見積書は「提出があれば認める。法定福利費も適正に確保し、確保のかわりに工事費を減額・調整をしないように指導」と大和ハウス、しかし「提出はほとんどない」状況に、組合が活用を強く要求し、協同歩調で推進することを確認。
 適正工期の確保に対し、組合の調査で必ず「余裕がない」との声が多くあがるとして見直しを求めました。
 建退共については、公共・民間問わず「すべての工事に貼付する」と明言させるとともに、5月の現場説明会では、実際に必要とする現場労働者を参加させるよう要望。「不払い解決」はじめ4つの確認書を締結し、終了しました。


別枠支給定着させる
標準見積書下請に指導/大成

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大成との交渉

 【共同デスク・浅野記者】大成建設(以下、大成)との交渉は埼玉土建・才田団長をはじめ56人、大成建設側7人の参加で行ないました。
 大成の行なった現場労働者の賃金実態調査は民間と公共現場の813人を集計。型枠大工1万5500円(前回1万6100円・民間1次)鉄筋1万5800円(1万4600円)塗装1万6400円(1万6600円)など10業種について報告されました。前回から土木で4%、建設で6~9%1次への支払いを引き上げたが、現場の労働者には十分に反映されていないと報告がされました。
 大成建設は「労働者の賃金を引き上げるよう指導した」としながらも「2次以下まで指導できない」と発言。参加者から「元請のリーダシップを発揮してほしい」と発言がありました。
 また、現場で建設国保に対する不理解から協会けんぽに加入するようにいわれた事例が報告され、建設国保と厚生年金のセットでスムーズに新規入場できるように徹底してもらいたいと要請。大成からは、「何度もいっているが、行き届かない所があるかもしれない。再度指導していきたい」と返答がありました。
 標準見積書は「材料と工賃、経費を分けて見積るように下請に指導している。工賃を計算できないところには計算表を用意して使うようにいっている。法定福利費の別枠支給を定着させていきたい」と前向きな姿勢が示されました。


「夢持てる建設業に」

後向き幹部に新入社員/鹿島

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鹿島との交渉

 【共同デスク・小松記者】「建設業が夢の持てる業界にしたいと考えている若造がここにいると皆さんにわかってほしい」。この日、会場から一番の拍手が送られたのは、今春、鹿島建設に入社し記録として参加していた社員から交渉終盤に出された発言でした。
 交渉団が求めた「現場労働者の賃金引き上げ」「2次下請以下の社会保険加入状況確認」「建退共証紙の民間工事での元請負担による貼付や組合代理請求」「基金制度創設への賛同」のいずれの要望に「できない」「もう少し待ってくれ」「上に伝える」という回答に終始する企業側幹部の姿勢にたえかねてのことでした。「自分の親父も皆さんと同じ現場で働く建設職人。親父の苦労している背中を見て育ってきたので、皆さんの気持はよくわかる」と意を決しての言葉に、交渉団長は「新入社員の若者をがっかりさせないでほしい」と鹿島の姿勢をただしました。
 会場の参加者からは「交渉に20年前から参加しているが、回答はまったく変わっていない。当時から『このままでは職人がいなくなる』と警告してきた。元請は職人がどこかから降ってわいてくると思っているのか」「命がけで働いて月30万円にいかない状況をあとどれだけ続けろというのか」など鹿島建設にきびしい声が上がりました。
 交渉は鈴木団長(千葉土建)はじめ48人が出席しました。


6年前と同じ賃金
元請の責任どこへ/清水

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清水との交渉

 【共同デスク・長谷川記者】清水建設(以下、清水)との交渉は、東京都連の伊東団長はじめ48人が参加。清水からは6人が出席しました。
 賃金・単価の引き上げを前提にのぞんだ交渉で、清水からは交渉団を失望させる回答にとどまりました。
 交渉団が「過去6年間の調査結果とくらべてもほとんど上がっていない。努力がまったく見えない」と迫ると、清水は「数字に表れていないだけ。自分たちの生業・命を守ることがだいじ。どう改善すればいいか、他社の状況や現場の声をききたい」と、開き直りともきこえる回答が飛び出しました。また「賃金は労使で決めること。請負契約であって賃金契約ではない」となおざりな対応に終始。これに対し交渉団は「結果は数字に表れる。努力の有無は一目瞭然。元請が政策的に取り組む責任がある」ときびしく追及しました。
 社会保険加入対策について、当初の「公表できない」との回答を追及し「1次業者の約2千社は3保険の加入率が高い」と調査報告を引き出しました。交渉団側からは「われわれには時間がない。4月以降80万社が廃業に追いこまれるともいわれている」と実情を訴え、次回の交渉で2~3次の社会保険加入と標準見積書提出状況について回答することを強く要請しました。
 この他、立川「ららぽーと」の死亡を含む3件の重大事故現場について多くの問題点を指摘し、早急な事実確認と改善の対応を求めました。


45年で1万6千円
現場の声もまるで人ごと/大林

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大林との交渉

 【共同デスク・村尾記者】大林組との交渉は、東京都連の窪田団長はじめ38人の仲間が参加。大林組(以下、大林)は建築事業部工事第2部部長ほか建築事業部安全環境部副部長や労務安全部副部長など12人で対応しました。
 冒頭、窪田団長から「われわれ現場で働く労働者の賃金・単価に対して、設計労務単価の引き上げや国によるさまざまな施策が行なわれているが、現場レベルではまだまだ反映されていない。ビックゼネコンとしてどうしていくのか」と迫りました。
 大林の現場でトイレの設置数が少ない問題は「設置するよう現場で指摘してほしい。必要に応じて対応する」との回答を得ました。
 賃金問題では、世田谷で大林、清水の現場で施工している仲間から、「45年左官業をしているがいまだに日給1万6千円だ」と現場の実態が告発されると、「これが実態といわれると、約束されたものが実行されていないようにきこえる。下請とは賃金水準を積み上げたもので契約している」との回答に終始し、ゼネコンとして現場の賃金を確保しようとする姿勢は見られませんでした。
 型枠大工の雇用主からは、「40人で3千万円の保険料です。型枠大工に2万円以上払っている。大林では45年の経験者が1万6千円しかもらっていない。はずかしくないのか。こんな実態はがっかりだ」と会社側をきびしく追及するすると、交渉団から大きな拍手が巻き起こりました。


賃上げもう待てぬ
スピード感持ちすすめよ/竹中

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竹中との交渉

 【共同デスク・鈴木記者】竹中工務店の交渉には組合側40人が参加してのぞみました。
 竹中は「竹和会(1次業者協力会)には単価を引き上げ、再下請に際しては適正な賃金が支払えるようにと指導している。現場労働者の賃金が引き上がるようになるにはもう少し時間を必要だ。マイスター制度などで職長のモチベーションアップも行なっている。現状の努力を理解してもらいたい」と発言があったのを受け、竹中の現場に従事した仲間から発言があいつぎました。
 「私たちのところは上がっていない。社会保険未加入の業者は依然として多数おり、加入期限は迫っている。もっとスピード感をもってすすめてもらいたい。竹中は『民間の雄』なのだから、果たす役割は大きい」「型枠大工を7年やっている。いくつものゼネコンの現場をやってきたが、竹中で職人として育てられたと感謝している。最近仕事が減っているが、夢の持てる現場を作ってほしい」「左官を40年以上やっている。竹中の現場に従事しているというプライドを持ってやってきた。業界をリードするシステムを竹中から作ってもらいたい」。建設業界をゼネコン、下請業者、労働者・職人が力を合わせて希望の持てる産業にしようという発言に竹中は「皆さんの叱咤激励に何とか答えたい」と回答せざるをえませんでした。
 また、交渉団はK大学現場での駐車場代金徴収問題の調査と民間工事での建退共貼付を要望し、すみやかかつ前向きの回答を行なうように求めました。

いまだ検討中
当たりまえの別枠明示/住林

 【共同デスク・山田記者】住友林業(以下、住林)との交渉には、石渡団長(神奈川県連)をはじめ46人の仲間が参加、住林側からは10人が対応しました。
 「昨年度、1物件につき平均18万円上がった発注単価は今年度も5万円程度上げる予定」との発言に、具体的な内訳を教えてほしいと要望すると「各指定業者と交渉での約束なので開示することはできない」と回答。
 交渉団から「18万円上げたというが、住林側が出した調査結果では圧倒的に下がっているではないか」とつめよると、「上げているのは間違いない。あくまで業者にお願いしているアンケートの結果であって、業者が職人にきいて書いたのか、業者自身で書いたのかはわからない。結果については残念」とまるで他人ごとのような回答に終始しました。
 調査方法も前回同様1次業者のみに行なっており、現場の職人に直接きき取るよう要望すると「発注金額と受注側の経営者が職人に支払う賃金に差があった場合、必要以上に介入すると信頼関係が崩れてしまうため限界がある」と後ろ向きな回答にとどまりました。
 法定福利費も前回同様別枠明示されておらず、1次業者にすべて吸収されるのではと追及すると「事前に業者と合意の上、見積は出している。別枠明示については本社で検討中であり、この場では回答できない」との答え。交渉団は別枠明示している他社を参考に、住林も別枠明示するよう強く求めました。


別枠請求認めよ
含んでいるからいいではない/積水

 【共同デスク・末松記者】「若い人たちが入職して、この業界がいいといってもらえるように一緒にやっていきたい」と佐藤団長(東京都連)が口火を切った積水ハウス(以下、積水)交渉には、組合側は40人参加し、企業側は19人が対応しました。
 今回、焦点となったのは、賃金調査の結果における法定福利費と工期の適正化についてでした。まず、賃金上昇分は地域によって異なるものの、5~13%の間で上昇しているとのことでした。
 しかし、法定福利費は「それに見合った金額を支払っている」と回答しつつも、「現状、下請業者からの標準見積書の提出はなく、先ほどの賃金上昇分にも法定福利費は含まれている」と話し、結局は別枠請求がされていないことがわかりました。
 これに対し、組合からは、「法定福利費は15~16%なのだから10%アップでは合わない。別枠支給を要望しているので、前向きに検討いただきたい」と要望がだされましたが、積水からは「従来から法定福利費を含んで発注しており、そこから10%アップなのだから適正だと認識している」と話し、別枠請求に理解を示しませんでした。
 また、設定工期について、組合側より「天候や休日が配慮されておらず、適正ではない」と指摘したことに「天候を配慮した工期を設定しているため、工期の延長はしない」と回答するも、「事実として受け止め調査・指導をしたい」との回答がありました。


現場からの報告 要求することがだいじ ここにいる大勢が声あげれば現場はよくなる

法定福利費払わせた
学習いかしてきちんと説明

 【東京都連の仲間の報告】私は従業員8人の事業主で主に野丁場で2次、3次の電気設備工事をしています。この1年は成果が出た年でした。
 一つが法定福利費の別枠請求です。昨年組合の標準見積書テキストによる勉強会に何回も参加し請求要求を自分でするだいじさをしりました。
 実際、最初はむずかしかったのですが、認めてもらえることができたのです。
 つい最近も応援現場に入る前、初めての取引で、支払い条件に法定福利費をお願いしたいと話すと、一瞬「えっ」という感じでしたが、きちんと説明し、3月の請求書に法定福利費を入れてだすと、ちゃんと入金がありました。

建退共15万円分もらった

 もうひとつは建退共です。私はつねに対象現場で従業員のために請求をしています。対象でない民間現場ももらえるかきくようにし、この間も484枚(15万40円)の証紙をもらえました。約半年、毎月請求し、直接請求でなく、上位企業への請求でしたので、なかなかもらえず、あきらめていたところ、現場が終って2カ月後にまとめてもらうことができました。
 組合で勉強をしてきた請求要求のだいじさを実感した1年でした。現場は変りつつあります、モチベーションをあげて取り組めば、ものごとは変る。今日の企業交渉もです。ここにいる大勢の力を一つにしてがんばりましょう。


社会保険の継続に必要

 【千葉土建の仲間の報告】私は従業員4人の事業主で主にミサワホームの2次で基礎工事をしています。
 社会保険は従業員に厚生年金、雇用保険はしっかりかけていますが、法定福利費がおりてこず、会社の持ちだしになっています。現状1次にも法定福利費は下りてきていないとのことで、今回の交渉では私たちの元へ法定福利費を下すことを追及したい、そうでなければ社会保険を継続していくことはできません。
 建退共は前回のミサワホームの交渉では「いい制度だ。運用について検討したい」と回答しました。今回の企業交渉ではいい回答を追及していきたいと思っています。
 一歩でも二歩でも交渉を前進させましょう。

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