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○ マイナンバー制度は何を狙うのか

東京土建本部書記次長 徳森岳男

 「今年10月から、お手元にマイナンバーを通知します」。内閣府は女優上戸彩さんを起用して「1人に1つ」とマイナンバー制度を広報しています。同制度は一昨年に法律が制定されたものの、制度の周知は不十分で、多くの人が内容をしらないのが実態です。「けんせつ」では3回にわたり、同制度の内容、問題点、実務的な対応などを解説します。


国が個人情報全て管理
社会保障、税の改悪へ導く

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マイナンバーを管轄する内閣府

 1968年、佐藤内閣が「各省庁統一個人コード連絡研究会議」を設置し、国民総背番号制の個人カード導入をめざしましたが、とん挫しました。
 1980年、大平内閣が少額貯蓄や郵便貯金の利子非課税制度の乱用・悪用を防ぎ、利子・配当所得の総合課税をめざすとして「小額貯蓄等利用者カード」(グリーンカード)法を成立させ1984年1月から実施することになっていました。しかし郵政省を中心に「郵便貯金が激減する」「日本人の貯蓄精神を損なう」などの巻き返しが強まり、金丸信が当時の郵政事業懇話会の会長として反対議員318人の署名を集めて鈴木首相や自民党三役に廃止を迫り、その後鈴木内閣で実施延期の方向が固まり、次の中曽根内閣で廃止となっています。
 2002年住民基本台帳ネットワークシステムが地方公共団体と行政機関で国民を特定する情報を利用することを目的に導入され、パスポート申請、年金の申請等で必要な住民票添付が不要になりましたが、国民の利用率は5%にとどまっています。
 2013年、安倍内閣(第2次)で5月にマイナンバー法が成立し公布されました。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」で施行は2016年1月となっています。
 2004年当時、経団連が「社会保障制度等の一体的改革に向けて」を発表しその中で「社会保障制度の給付と負担の統合的把握について(1)社会保障・福祉制度に共通する個人番号の導入は社会保障制度の適用面・負担面での不公正をなくすことを目的の一つとするものである。たとえば国保に加入、保険料を納付しているのに、国民年金には加入していないといった不公正をチェックするためのものである。さらに国税庁と社会保険庁の機能統合を進め、将来的には納税者番号での活用も検討し、負担面での公正さを高めていくことをめざすべきである、(2)社会保障個人会計(仮称)の導入は社会保障の各制度から同じような趣旨で行なわれている給付を合理化することを前提に、個人ごとに給付と負担を把握して、重複給付をチェックし、効率的な給付を行なおうとするものである。あわせて、社会保障制度は、年金制度・高齢者医療制度・介護保険制度などにおいて個人単位で把握していく方向で見直していくことが求められるとし、国民の番号の必要性を示しました。

医療費を限度以上使えば年金支給額を削減も

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赤ちゃんから高齢者まで12桁のナンバーが付番されます

 そして8年後の2012年、マイナンバー法成立の前年に「社会保障と税の一体改革大綱」を政府与党が発表し、その中でマイナンバーのシステム導入を前提に社会保障制度の総合合算制度を提唱しました。
 社会保障制度それぞれの単位ではなく家計全体をトータルにとらえて、医療・介護・保育等に関する自己負担の合計額に上限を設定する「総合合算制度」を創設するというものです。経団連の提言を参考にすると例1として「カフェテリアプラン型」があります。一個人が医療費を限度以上に使いすぎるとその年の年金支給額を自動的に減らす、介護保険の利用限度を減らすといった総合合算による給付上限規制です。例2として「繰り延べ型」も出されており一個人が医療費を限度以上に使いすぎるとその翌年以降に使える医療費限度額が削減される繰り延べ制限です。
 またこの大綱では税制抜本改革の基本的方向性も出されておりその中で(1)マイナンバーで公平・透明・納得の税制にするとして税制に対する国民の信頼を確保するため、社会保障・税番号制度の導入も展望しつつ、「公平・透明・納得」の3原則を基本とし、できるだけ税制を公平かつ簡素で分かりやすいものとする。(2)社会保障・税番号制度の導入として税務分野において番号制度の適正な利用を確保するためには、納税者や事業者の方方に申告書や法定調書に「番号」を記載していただくといった手続が必要となる、として税と社会保障の一体改革にはマイナンバー制度が必要不可欠であるとされたのです。

政府はメリットのみ宣伝するが

 国は国民に共通番号をふることによって、複雑化・多様化するさまざまな制度の運用が事務的に合理化されるメリットを宣伝しています。特に行政手続きの際の一部の書類の省略化やインターネットによる自己情報の見える化、マイナンバーカードとクレジットカードなどの一体化による国民にとっての利便性を前面に打ち出しています。
 しかし経団連や国の税と社会保障の一体改革大綱からみえる本当の狙いは、徹底した所得の把握と家族情報との照合、病歴や医療給付額・年金額など個人のプライバシーや預貯金など懐具合をすべて国で管理し、税務調査の実効性を高めながら社会保障関係の給付の総合抑制と可能な限りの消費税率引き上げや保険料引き上げを図ろうとしていることはあきらかです。

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