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○ マイナンバー制度は何を狙うのか"

東京土建本部書記次長 徳森岳男
増税と給付抑制に活用
周知不徹底なのに10月通知

 2015年10月5日から個人番号が、住民票のある国民全員に通知カードとして届けられます。
 2016年1月からは個人番号の利用開始が始まり、必要な人は顔写真入りの個人カードを申請することができるようになります。2017年1月からは国の機関どうしで情報連携の開始が始まり7月からは地方公共団体と医療保険者の情報連携が開始されることになっています。
 マイナンバー制度のメリットは、2017年7月の情報連携から(1)一つの番号で多種多様な手続きが可能になる。(2)マイナポータルとしてネットで医療や税情報の閲覧ができるようになる。(3)健康保険手続きで住民票や所得証明等が不要になるなどです。
 しかし、メリットの裏ではさまざまな突合(突きあわせ)が行なわます。

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さまざまな情報を突合

 2016年以降、源泉徴収情報と雇用・社会保険との連動がはじまります。具体的には(1)源泉徴収票に個人番号を記入することになるために雇用・社会保険の加入漏れが指摘され強制加入になる可能性があります。(2)源泉総括表に支払先の個人番号の記載が求められるようになると短期のアルバイト含めてすべての収入が合算され個人の年収から世帯全員の所得が明らかになります。サラリーマンの3号被保険者の厳密化・生活保護の制限などに影響がおよぶと見られます。
 そして外注費(外注工賃)にひもつけが強化されます。外注先が白色申告の場合は個人番号・法人の場合は法人番号が振られるため白色の給与申告の場合、給与支払先の特定により源泉指導される可能性が強まります。したがって事業者にとっては不特定先を安易に外注工賃として源泉できなくなるとともに、同一人物の恒常的な外注扱いも給与として認定しなおされる可能性があり、特に消費税の仕入れ控除に大きな影響をおよぼしかねません。
 雇用・労災保険にも連動が進むと各種給付の突きあわせが行なわれ、給付の合算上限が設定されることにつながる可能性があります。また源泉徴収票の連動によって適用すべき労働者および未適用事業所の洗い出しが進むことになり、特に個人事業所の場合で1人以上の源泉雇用者を持つ場合、雇用保険の適用指導となる可能性があります。
 また法人でも法人番号から未適事業所の洗い出しや源泉者のうち雇用保険未加入者への適用指導が強化されます。労働者側では雇用保険による失業給付と年金との突合で支給制限や失業給付・労災休業補償と年金との突合で給付制限が計画されています。


各種書類に個人番号
土建国保にも大きく影響

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支部で届け出る書類も本人確認が必要に

 この制度は税と社会保障との連動が目的ですので、東京土建国保も例外ではありません。加入している本人・家族19万人すべてのマイナンバーを土建国保組合が集め管理し、あらゆる書類に付番しなければならなくなります。
 2015年10月から発送される通知カードに記載された個人番号を土建国保組合に所定の用紙で届け出ることが求められます。個人番号の利用が始まる2016年1月からは、加入申込書などの届出書および給付金などの申請書に個人番号を記入していただくことになります。
 個人番号が記載された届出書等を支部に提出する場合は、支部事務所は個人番号の提供を受けることになるため、必ず本人確認(番号確認と身元確認)をすることになっています。
 組合員の家族の本人確認は組合員本人が自宅などで確認することで委任状などの書類を整える必要があります。郵送の場合は届出書等に記載された内容を確認する必要があるため、本人確認書類の写しを同封して郵送していただくことになります。
 事業主は、社会保障・税分野の手続においては「個人番号関係事務実施者」として位置づけられています。国保組合規約に事業主の位置づけや委託業務内容等を規定することによって、国保組合に関する手続で個人番号を取り扱うことができるようになります。事業主が個人番号を取得するにあたり、利用目的を本人に通知又は公表しなければなりません。あらかじめ複数の利用目的を包括的に明示して取得、利用することになります。
 国保組合と委託関係になることから、大きな課題として、「安全管理措置」や罰則が適用されることになります。
 健康保険・厚生年金では、個人番号の利用が東京土建国保より1年遅れの2017年1月から開始されることになっているため国保組合、本部で混乱のないよう実務手続きについての周知をはかります。


情報漏洩の危険性大
財政再建は不公平税制改善で

 マイナンバー制度は、社会保障の公的責任を縮小し、「自助」の考え方を具体化するシステムとして活用される可能性や、個人情報等の漏えいの危険性が少なくないことから、東京土建は反対の立場をとっています。
 学習や宣伝を通じて若い世代、関心の無い世代にも「マイナンバー制度の真の目的は増税と医療・介護・年金給付の抑制にある」ことをしらせ、幅広い反対の世論を作っていくことが求められます。まだまだ現制度の運用延期、あるいは停止・廃止は十分に可能です。
 マイナンバーによる給付制限や国民のふところ具合をさぐらなくても不公平税制の改善と応能負担の原則で財源は十分まかなえることを強調し訴えていきます。
 消費税率8%の引き上げで得た増収分(約5兆円)の多くを大企業の減税(2013年度政策減税1兆4805億円)や国の赤字解消にまわしながら、国民の命を守る社会保障の充実には1割分の5000億円しか回りませんでした。
 そもそも国の財政悪化は少子高齢化を招いた政策にこそ原因があります。
〇労働規制緩和によって若者の半数を非正規雇用者に追いやった結果、所得と購買力の低下とともに結婚意欲の減退にもつながり、出生率を悪くしました。
〇大企業・高所得者優遇政策によって大企業や富裕層にのみ富が集中するいっぽう、中小零細事業者や庶民の所得が減少しました。
〇消費税率や住民税の引き上げによって国民の使える所得が減少し購買力の低下を招きました。
〇社会保障改悪によって自己負担と保険料の引き上げで支出がふえるとともに、将来不安に備えた貯蓄にお金を回すことで購買力の低下を招き結果として消費不況をうみだしたなどが、税収不足の根本原因に上げられます。

高所得者層に応分の課税を

 高所得者は勝ち組として高い保障と優遇を受けても当たり前との風潮が広められていますが、高所得は個人や会社の努力と能力だけで得られたものではありません。トヨタの例を上げれば、同社が2兆円に及ぶ純利益を生んでいるのは、国や県や自治体が公共工事として行なった社会インフラ整備(港湾・道路)の支援があってこそ成り立っています。また優秀な技術者や技能者は公的な資金の入った教育機関や親の支援があってこそ成り立っているものでもあり、社会的責任として応能の税を負担すべきです。
 したがって所得税(労働所得)40%を旧70%に近づけるとともに不労所得(株取引等)20%の大幅引き上げもしくは分離課税を総合課税に戻させる運動や保険料税の上限を撤廃し所得が高い人に相応の保険料負担を求め、給付は公平化するといった運動も必要になります。

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