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○ 人間らしく働くルールを

代々木総合法律事務所 三浦佑哉弁護士

 安倍政権は、今年9月11日、派遣法「改正」案を衆議院本会議で強行採決し、成立させました。労働組合、市民団体、弁護士などを中心に反対を訴え続けてきましたが、その反対の声を無視して強行採決したのです。成立した「改正」派遣法の問題点等を代々木総合法律事務所の三浦佑哉弁護士に解説していただきました。


派遣は例外的な働き方
不安定雇用、中間搾取の温床

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許すな!雇用破壊!5・14アクション

 「改正」派遣法の説明の前に、派遣とは何かについてご説明します。
 働くときには必ず労働者と会社との間で労働(雇用)契約を結びます。通常は、労働契約を結んだ会社の指揮命令下で働きます(直接雇用)が、派遣労働者は、派遣元会社と労働契約を結び、派遣元会社と派遣契約を結んだ派遣先会社の指揮命令下で働きます(間接雇用)。
 そのため、派遣という働き方は、(1)派遣先との間に労働契約が存在せず「雇用が不安定」、(2)派遣元がピンハネすることで「中間搾取」される、(3)派遣元と派遣先のどちらが責任を負うかあいまいになり労働災害などが多発するという大きな害悪があります。このような害悪をなくすため、戦後、労働者の権利を保障した現在の憲法のもと、職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)や労働基準法6条(中間搾取の禁止)で間接雇用は禁止、直接雇用が原則とされました。
 ですが、違法な派遣が横行し、それを追認する形で、約30年前に労働者派遣が合法化されました。その後も財界の要求で規制緩和がくり返されてきましたが、「労働者派遣は臨時的・一時的な働き方である」という原則を踏まえ、労働者派遣の拡大に一定の歯止めがかけられていました。


生涯ハケン、正社員ゼロ、クビ切りは自由

IMAGE  ところが、今回の「改正」派遣法は、「労働者派遣は臨時的・一時的な働き方である」という原則を事実上取っぱらう内容になっています。
 「改正前」派遣法では、通訳など専門26業務には期間制限がありませんが、それ以外の一般業務には、業務ごとに原則1年、最長3年の期間制限があります(業務単位の期間制限)。その期間を超えて、その業務で派遣労働者を使用するときは、派遣先が派遣労働者を直接雇用しなければなりません。
 ところが、「改正」派遣法は、この「業務単位の期間制限」を廃止しました。変わって「事業所単位の期間制限」を設けましたが、派遣先は、自分の事業所や工場では、3年ごとに過半数労働組合か従業員の過半数代表の意見を聴けば(賛成しなくても「きくだけ」で構いません)、その期間を延長し、いつまでも派遣労働者を使用することができます。「個人単位の期間制限」、つまり事業所や工場の中の部署(たとえば製造課)では、個人の派遣労働者は3年までしか働けないという期間制限も設けましたが、派遣先は、派遣労働者を入れかえれば、その事業所や工場でいつまでも派遣労働者を使用することができるのです。また、派遣先は、3年の制限期間がきた派遣労働者でも、部署を変えれば(その人を)引き続き使用することができます。
 つまり、派遣先からは永久に派遣労働者を使用できるという意味で、「生涯ハケン・正社員ゼロ」が可能だということです。他方、派遣労働者からは従来は原則1年、最長3年の期間を超えれば、派遣先が従来業務を継続する限り、直接雇用の機会を得られたのがなくなるという意味で、「派遣労働者クビ切り自由化」になるということです。


待遇改善はデタラメ
労働法制改悪阻止しよう

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安倍政権はさらに雇用改悪を狙っている

 国会で安倍首相らは、「改正」派遣法は、「正社員への道を開くもの」とか「派遣を選択した人の待遇改善を図るもの」であると棒読みのように説明しました。多くのメディアもそのように報道しています。ですが、こんな説明は完全なデタラメです。「改正」派遣法に盛り込まれた「雇用安定措置」や「キャリアアップ措置」などには、正社員化を促す実効性がありません。また、「均衡」にとどまらず「均等待遇原則」を実現しなければ、派遣労働者の低賃金や雇用安定を改善できません。
 改正「派遣法」を放置すれば、多くの正社員が、低賃金・不安定雇用の派遣社員に置き換えられるのは間違いありません。「私は派遣社員でないから関係ない」という話ではないのです。正社員化につながる派遣制限期間の導入、派遣対象業務の縮小など、派遣法の抜本改正が必要です。
 安倍政権は、派遣法「改悪」に続き、「過労死増大・残業代ゼロ」を招く労基法改正、お金を払えば解雇できる「解雇の金銭解決制度」の導入などをもくろみ、来年の通常国会での成立を狙っているといわれています。
 人間らしく働くルールを守り、確立していくために、一緒に声をあげましょう!

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