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○ 建設アスベト訴訟闘いの展望

専従常任中執 井澤智

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3500人が参加した全国決起集会
(2015年5月22日、日比谷野外音楽堂)

 建設アスベスト訴訟は2008年5月に首都圏で提訴してから7年半。今年は年初から大阪、京都で判決があり大きな山場を迎えます。2016年のたたかいを首都圏建設アスベスト統一本部事務局長でもある井澤智さんに展望していただきました。

 首都圏からたたかいの火ぶたを切った建設アスベスト訴訟は、全国3高裁(東京2ルート、福岡)、5地裁(札幌、東京、横浜、京都、大阪)へと広がり、原告数は640人を超える大きなたたかいとなりました。1月には大阪、京都の地裁で連弾判決が出され、札幌訴訟も3月に結審することから16年は3つの判決が続き、解決に向けたかつてない運動をつくる1年となります。
 たたかいは、原告を先頭に7年半にわたる法廷内外の運動を積みあげ、東京判決(12年12月)と福岡判決(14年11月)で国に対する勝利をかちとりました。全面解決要求である「建設石綿被害者補償基金制度」創設に一歩ずつ近づいています。


国の責任に決着
大阪、京都勝利判決で

 今年は1月22日に大阪、1月29日に京都とわずか1週間の間に2つの判決が出され、国に対して2勝すれば建設アスベスト訴訟で4連勝、さらに共闘した泉南アスベスト国家賠償訴訟の最高裁判決も加えれば5連勝となり、アスベスト被害に対する国の責任に決着をつけることになります。また、1週間に2つの勝利判決となれば相乗効果を生み出し、政治が建設アスベストの被害と解決に目を向けざるを得ない情勢となります。
 大阪、京都の法廷では、一人親方に対する国の責任や建材メーカーに対する責任にも、この間の到達にたって主張・立証をつくし、裁判官に先行判決を踏襲するだけではすまない局面をつくりだし、これらの問題に正面から判断を迫るレールをしきました。とりわけ企業責任では、建材別にシェア等を調べ、原告ごとにアスベスト疾患を発症するに至った主要建材と原因企業を特定して因果関係を立証しています。2つの判決は、国への連続勝利と企業責任においては数社でも突破し風穴を開ける可能性があります。

東京高裁闘争にも追い風に

 東京土建が原告を組織する東京高裁のたたかいは裁判官の交代があいつぎ、ようやく判決を書く合議体がそろった途端に大段亨裁判長が「次回期日で結審したい」とのべ、原告証言を法廷できかない訴訟指揮に踏み出しました。公害訴訟の常識は、被害の実態をきかずに血の通った判決は書けないということです。首都圏建設アスベスト訴訟統一本部に結集する原告と支援組合は、この訴訟指揮に強く抗議し、原告からの手紙やハガキ要請、高裁前宣伝行動に取り組み、弁護団は不十分な状態のまま棚あげとなっている双方の主張・立証を継続せよという正当な要求を意見書として提出しています。
 この東京高裁の反動的姿勢に、国へ4連勝の判決を得れば、流れを根本的にくつがえす不公正判決を書くには相当困難な状況に追いこめます。関西の連続勝利判決は、東京高裁の不当な訴訟指揮と不当判決を許さない砦とし、高裁の次回期日である3月14日に結審させない武器とします。


国会決議をめざし
広げよう200万署名

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新宿駅西口の駅頭で署名を訴える原告

 昨年5月、自民党内に「建設技能者を支援する議員連盟」(国会議員152人、12・10現在)が結成され、活動項目の1つに建設アスベストの救済が掲げられました。この動きを追い風に関西訴訟団と共同で「11・19全面救済を求める院内集会」を開催し、国会閉会中にもかかわらず、この間の数倍の86人の議員(秘書も含む)が出席しました。
 全建総連が、5月をめどに「建設アスベスト被害者救済の補償基金制度を検討すること」を掲げ、国会決議を取ることを明確に目標とした国会請願200万署名と絶対多数の紹介議員獲得の新たな運動をスタートさせました。全建総連としては建設国保を守るたたかい以来の取り組みであり、成功させれば建設アスベスト運動の「局面を変える」ことにつながります。
 通常国会の開催が早まることで、連続判決は白熱した国会論戦と国会周辺での国民的大運動のなかでの連続勝利が予想されます。「国民の命を大切にせよ」との広範な世論と連帯し、「日本の産業発展を支え、その犠牲となったアスベスト被害者を救済せよ」「命や健康を経済発展よりも大切に」のスローガンをかかげ、与野党問わず政治が動かざるを得ない課題に押し上げ、国民にも建設アスベスト問題の解決を認識してもらうことが可能です。6、7月の政局も考慮すれば、解決気運を高める絶好の機会です。


16年中に解決へ道筋
世論と政治情勢つくり

 関西連弾判決を勝利し、この勝利判決を武器に国会請願運動をすすめ世論と結合して国と企業に圧力をかけることで、被告側に建設アスベストの問題を真摯に受け止めさせます。5月20日には全国集会も開催し、国会決議の採択とあわせ解決に向けた政治情勢をつくりだせれば、16年後半戦の主戦場となる東京高裁に大きな影響を与えることができます。夏以降に予想される札幌判決も力に、東京高裁の「不利な情勢」を逆転させ、16年中に「解決への道筋」をつくりあげていきます。
 仲間のみなさんのいっそうのご協力をこころよりお願いします。


補償基金つくれ
被告企業18社と交渉

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警備員がガードするなかで社前での
交渉となった住友大阪セメン

 【本部・高見京子記】11月24~27日、建設アスベスト訴訟の被告18社を来年1月の大阪・京都地裁判決を前に企業の裁判に対する考えと被害者補償基金に対する意見を確認するため首都圏・京都・大阪・九州の組合・原告団・弁護団が交渉を行ないました。
 基金創設に理解を示す企業もあれば、係争中でコメントしない企業もありました。
 アスベストでもっとも多くの利益を得た「ニチアス」は、訪問の日程をあらかじめ通知したにもかかわらず警備員を入り口に配置して私たちを中に入れようとせず、その上担当者への取り次ぎもしないというありさまで、寒い中、朝から集まった原告の声にも耳を傾けようとしませんでした。
 屋内できちんと交渉し、原告団の被害実態をきいてくれた企業は10社、屋外での交渉は7社でした。
 大阪・京都の判決で1社でも企業責任がいい渡されることを期待し、被告企業交渉を継続していきます。


 命あるうちの解決を

正しい法の裁きを望む

 【首都圏建設アスベスト訴訟第2陣原告団共同代表・田中更さんの話】私は高度成長時代、石綿吹付け工とし働いていました。40歳のころから間質性肺炎に苦しめられ、69歳の2011年に石綿肺に労災認定されました。
 11月から在宅酸素が始まりました。病状は進むことはあってもよくなることはありません。今日寝たら、明日起きられないかもしれない。そう思いながら生活してます。
 原告が元気なうちに、国や企業はいっこくも早く、責任を認め、補償基金を設立すべきです。争いをやめさせる正しい法の裁きを望みます。

建材メーカー責任を明確に


 【関西建設アスベスト訴訟大阪訴訟原告共同代表・群家滝雄さんの話】私は35年内装工として働き、建材企業からはいろいろな建材の説明を受けてきましたが、アスベストについては注意をうけたことはありません。2003年の春に発症し呼吸困難で仕事ができない身体にさせられてからは建設現場に足を一歩と踏み入れていません。
 このような身体にした建材メーカーの責任を認めさせる判決をかちとれると思っています。勝利判決で企業を追いつめ、全国の救われない被害者の役にたてればとがんばっています。

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