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○ 安倍政権の支配とNHK政治報道の偏向

放送を語る会運営委員 戸崎賢二
国民の知る権利を無視
安保法成立に手を貸すNHK

 昨年11月15日、けんせつプラザ東京で開催した、けんせつ通信員総会に元NHKディレクターの戸崎賢二さんをお招きし、安保法案報道で国民から批判を浴びているNHKをめぐって講演をしていただきました。以下、講演内容の要旨をご紹介します。

NHK安保法案報道の特徴

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NHK包囲行動デモ

 NHKのニュースを一日だけ見ていても、なかなかその特徴がわかりません。しかし、長期にわたってモニターすると、次のような特徴があることに気づきます。代表的なニュース番組「ニュースウオッチ9」を例に指摘します。
(1)政権の失点になるような
事実、法案の問題点は極力伝えない。
(2)政府与党の主張を効果的
に伝える。記者解説は政権の説明や主張をなぞるような内容が多い。
(3)国民各層の反対運動や、法案を批判する識者の声の紹介は少なく、詳しくは立ち入らない。
(4)法案に関連して問題になっている重要な事項、たとえば「後方支援」「砂川事件」「機雷掃海」などについての独自の調査報道はほとんど見られない。
 とくに重大な問題は、国会審議で明らかになった政権の失点、安保法案の危険性を極力伝えない、という傾向です。
 報じなかった事項の代表例としては、「ポツダム宣言を詳らかに読んでいない」とする安倍首相答弁、また中谷防衛大臣の、「日本に対して攻撃の意思のない国に対しても攻撃する可能性を排除しない」「『イスラム国』に対する軍事行動での『後方支援』も可能」「『後方支援』では核ミサイルも毒ガスも法文上運搬可能」、といった重要な答弁が報じられませんでした。
 このような事項が放送されなかったことは重大です。
 NHKニュースだけを見ている視聴者には、「なかったこと」になるからです。
 このほか、全国的に盛り上がった市民の抗議行動についても非常に簡単にしか報じない例が目立ちました。

「政府広報」の印象色濃く

 ニュース番組に登場する政治記者の解説も批判を浴びました。全体に、政府・与党の方針・主張・思惑の説明が大半を占め、批判的な指摘はほとんど見当たりません。
 国会審議を通じて、安倍首相が集団的自衛権行使の理由にした「邦人輸送の米艦防護」や「ホルムズ海峡の機雷掃海」について、答弁が大きく変わり、あいまいだったことが明らかになりました。
 しかし、この頃の政府答弁について、NHKの政治記者は、「国民の法案への反対意見が根強くあること意識してか、安倍総理や閣僚の答弁からは、懸念を払拭しようとする姿勢が随所に見られた」(「ニュースウオッチ9」9月11日)などと評価しています。
 また、国会審議の報じ方も特徴がありました。
 「ニュースウオッチ9」では、与野党の質問、首相、あるいは防衛大臣の答弁、という一問一答の編集スタイルが支配的でした。
 この伝え方では、審議の紹介は必ず首相や防衛大臣の答弁で終わる形になり、政府答弁の印象が強く残ります。しかも与党の質問もありますから、全体として政府・与党の主張の部分が多くなります。「政府広報」だ、と批判されるのも理由があるわけです。

安倍政権がNHKへ介入

 2013年の秋から冬にかけて、安倍首相はNHK経営委員4人を新たに任命しました。NHK経営委員会は、NHKの最高議決機関で、会長の任命、罷免権も持っています。この重要な機関に送り込まれた4人は、長谷川三千子、百田尚樹、そのほか明らかに安倍首相に近いか、強く支持する人物でした。
 さらに現会長の選任では、官邸が検討中に、麻生大臣が「籾井っていうのもいるな」と発言したと報じられました。会長はこのところ与党や政権に近い財界人が事実上推薦して決まっています。
 こうしたNHK関係の人事への政権の強い影響力が、NHK政治報道の偏向の背景にあるのではないでしょうか。
 NHKでは伝統的に政治家と関係の深い政治記者が局内で出世し、支配力を強める構造的な仕組みがあります。その上に、「民主主義は多数決、その考えで放送していけば政府と逆になることはない」と就任記者会見でのべた籾井会長が座っているのです。

政府からの独立があやしく

 戦前、戦中、NHKは政府の強い統制のもとで、戦争遂行の道具とされました。戦後はその歴史の反省にたって、放送法ができ、受信料だけで経営する、政府から自主・自立の放送機関へとつくりかえられました。この政府からの独立が、政治報道の分野であやしくなっているのです。
 安保法制のもとで、日本が海外で武力行使する可能性がある時代に、NHKが「政府広報」のような報道をしたらどうなるでしょうか。

視聴者はチェックを 抗議の声を伝えよう

 視聴者としては、NHKの政治報道をよくチェックして、おかしいと思ったら抗議の声をNHKに伝えることは極めて重要です。そうしないと「政府広報」の報道はあらたまりません。このことを最後に皆さんに訴えます。


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