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○ 個人が大切にされる社会に 第42回幹部学校開催

 6月26日、ベルサール東京日本橋で東京土建第42回幹部学校を開催し、午後からは4分科会、1講座を行ないました。社保・税金分科会での芝田英昭立教大学教授の「社会保障解体とマイナンバー、TPPとの関連」、講座での白神優理子弁護士(八王子合同法律事務所)の「安保法制阻止のたたかいが民主主義・立憲主義を求める多様な市民運動を発展させる」と題する講演の一部を紹介します。(記事・見出しとも責任は編集部)


社会保障崩壊に導く2035提言書 芝田英昭立教大学教授の講演から

医療保険は2階建てに
負担ゼロで大企業は大喜び

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芝田英昭教授

 公的医療保険は国民健康保険と会社等で雇われている人の健康保険(健康保険組合、協会けんぽなど)、大きく言うとこの二つで、これらを一つにしようということです。つまり、すべての国民が1階建ての部分として国民健康保険に入る。2階建ての部分は任意で付加的な保険として、たとえば私的な株式会社がやっているような保険に入るとか、あるいは地域型のそういうような2階建ての部分に入る。そして1階の部分を共通の医療保険にするということが『保健医療2035提言書』(以下、提言書)に書かれています。これは流れから見ますと「国民健康保険」という形になると思います。すべての国民が「国民健康保険」に入る。そして2階建ての部分は任意ですから、入りたい人と入れない人が出てくるということなのです。
 「別に関係ないじゃないか。われわれだって国民健康保険だ」と思うかもしれません。なぜ大きな問題なのかと言いますと、現在の国民健康保険と健康保険の一番大きな違いは健康保険には事業主負担があるということ。つまり会社を経営している方がたの負担があるのです。労働者だけが保険料を払っているわけではなく、日本の場合は労使折半ということになっておりますので、労働者と使用者、雇用主が半分半分保険料を払うという仕組みになっています。国民健康保険にはそういう仕組みはございません。基本的には労働者だけの保険料負担ということになってきます。
 これは何を意味するのか。すべての国民が国民健康保険になるということは、企業の負担がゼロになるということです。つまりこの部分の保険料を1円たりとも払わなくてよくなる。つまり経団連が一番喜ぶ。経団連は大企業のクラブですが、健康保険がなくなって国民健康保険になってくれれば、企業側の負担がゼロになるのですから、こんなにうれしいことはありません。

「軽い」のに病院へ来るな
自己負担増、保険外し進める

 『提言書』には軽い疾病については自己負担を上げていこうと書かれています。軽いのに病院に来るのはおかしいということが根底にあるのです。国民医療費が高くなっていく一つの要因は軽い段階で病院にかかるから。かからせないためには、軽い疾病については自己負担割合を上げると書いてあります。
 疾病というのは早期発見、早期治療というのが極めて大事だというのは皆さん方もよくご存じかと思います。
 日本民医連が、重篤な状態でもって救急で運ばれて手遅れで亡くなるケースについて傘下の医療機関における調査を発表しています。2015年度の発表でも実に63人が亡くなっています。この中で15人は実は正規の保険証がある。保険証がない状況で医療機関にかかったら100%自己負担だからと思って行かなかったのではなくて、保険証があっても医療機関にかかることができなくて、手遅れで亡くなった人が十数人いることが報告されています。今でも3割負担が重いから医療機関にかかることを忌避する人がいて手遅れで亡くなっているのに、軽い疾病の自己負担を上げれば、当然今以上に医療機関にかかれなくて、結果的に重くなってからかかれば、実は医療費がもっとかかることになるのです。これは逆効果だということが言えると思います。
 保険の利かない部分を多くするともあります。この『提言書』の中には具体的な名称は書かれておりませんが、国の社会保障審議会の医療保険部会では具体的な名称がすでに出てきております。たとえば、腰痛や肩こり等によく使うモーラステープを保険から外そうということも、もう審議会の中では議論されています。第2類の風邪薬等も市販薬局で売っているからあえて処方する意味がないから風邪薬もすべて保険から外そう、当然ビタミンとか整腸剤も保険が利くものにしているから国民医療費が高くなる。だから外していけという議論がすでに進んでいます。
 結論的に言いますと、2017年法改正を行なうということが出ていますのでその中で出してくるのか、診療報酬の改定のときに一気に外すのか、2方法があるとは思うのですが、そう遠くない時期に保険が利かない薬がふえていくと思います。

収入0でも資産から
入院の居住費すべて有料

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混み合う大病院の受付

 財務省は社会保障改革の工程を掲げています。医療においては入院食費・居住費、これを患者の預貯金と資産も加味して取るとあります。収入がゼロでも、預貯金とか資産も加味しながら負担を求めていく方向性です。これは2016年度末までに結論を出して、速やかに実施するとなっています。
 それと一般病床。この居住費も患者負担に変えていくということを言っています。一般病床とは多床室のことです。つまり、現在は差額ベッドという形で一部取れることになっていますが、これを何床であろうが全部取っていきますということ。入院したら居住費は全部取るのです。

混雑してても病院選べず

 そしてかかりつけ医以外の受診をした場合の追加負担。2016年4月から500床以上の医療機関にかかる場合は、紹介状がなければ医療費窓口負担の3割プラス5000円が取られることになりました。それと同じようなことをかかりつけ医というのを指定させてそれ以外に行く、つまり大きな病院ではなくて自分の家の近所のAという医療機関をかかりつけ医としたとします。ところがそこが混んでるから2、3軒隣のBという医療機関があったとして、そこに行った場合の話です。つまり1カ所だけかかりつけ医を指定しますから、診療科によって違いますが、内科の場合はここ、外科の場合はここ、歯科の場合はここということで当然そういうことになります。総合医療機関ならそこだけになりますけれども、かかりつけ医として指定した以外の医療機関に行く場合は別立てで定額負担を取ることも2017年に法案として提出する予定になっています。
 パッと医療機関に行っていつでもかかれる、1962年に「1枚の保険証さえあればいつでもどこでもどの医療機関にもかかれる」という皆保険体制を徹底して崩していこうというのが今の安倍政権なのです。
 これが入ってしまうと大変なことになります。子どもにも覚えさせておかないと「Bというところに行ったらいけないよ。Aというところだけ行かなきゃ」とか、「学校から近いからBに行きました。これは駄目なんだよ」という話になるのです。


感想文から

・とてもわかりやすかった。これからの保健医療がとても不安になりました。税金等も富裕層から本当にとってもらいたい。
・聞くこと聞くこと、ため息が出てしまうものばかりで、社会保障という名を使うばかりで政府のやっていることはひどいものだと思いました。
・年金などきちんとしてもらいたい。やはり国民の収入の差があり、大企業に勤めている人、職人との差、同じ人間としてどうかと思う。
・「保健医療2035」提言書の内容にびっくりしました。詳しく内容を学ぶ必要性を感じました。
・税金のとり方、使い方がおかしいです。今の日本は、国が責任を放棄して、国民の生活が脅かされています。
・税は払うべき人が払わなければ社会は成り立たない。また、大企業の税に対するずるさ、違反ではないが国の借金はふえるだけ。選挙が大事。
・このままでは一部の富裕層しか人間らしい生活ができなくなってしまいます。運動の強化を実感しました。
・社会保障は「へん」だと思います。パートで介護の仕事をしており、とても心に入りました。


改憲の動きに抗して運動は発展した 白神優理子弁護士の講演から

公益に反すデモ禁止
国家が主の自民党改憲草案

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白神優理子弁護士

 今の憲法の柱、一番最初は主語が「日本国民は」です。そもそも主語が「日本国民は」というところから、自民党改憲草案(以下、草案)では「日本国は」と国家が主語に変わっています。「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く」。天皇をたたえている前文です。そして「日本国民は国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」と国防義務のようなものまで規定しています。「和を尊び、美しい国土と自然環境を守りつつ、日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」。あくまでも国家が主人公なんです。天皇を戴いている素晴らしい国家だという考えが示されているのが草案の前文。ここにすべての考え方が凝縮されていると思います。
 現行憲法の目的は国民主権です。政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさないようにするために、国民を主人公にしましょう、これが現行憲法の目的です。ところが草案の目的は国家の存続。国家が主役ということです。
 人権の考え方も変わっています。人権の上に公益及び公の秩序を置いています。国民の責務という章が生まれているのです。「国民は憲法上の自由、権利を濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び秩序に反してはならない」。皆さんがダンスを踊る時も、国会前でデモをする時も、組合で決起集会をする時も、すべて公益及び公の秩序に反しない範囲でしかやってはいけませんよっていうことが書いてあります。
 公益は国の都合と言い換えることができます。たとえば、今安倍政権は原発の再稼働を国家戦略にしています。原発の再稼働が公益になるのですからそれに反しない範囲でしか権利が行使できないということは、原発再稼働反対、原発ゼロの集会やデモ行進はやってはいけないということになるのです。国が許した範囲でしか、組合活動もデモ行進も表現行動もSNSでの発信もできないということです。権利の考え方が180度変わっているということです。

民主主義は目覚めた
空気読むのでは変わらない

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「戦争法は廃案に」とコールする若者。
(2015年8月30日の国会前の行動)

 今日本は、岐路にあります。「戦争法」を廃止して民主主義を、憲法を私たちの手に取り戻すのか、それとも戦争する国づくり、大企業大もうけの安倍改憲を許すのかという岐路にあるということです。
 しかし、私たちの道には目の前に希望が広がっていると思います。安倍政権が狙う大国日本の柱、「戦争する国づくり」。これを手始めにまずは解釈改憲で行なうと始めたのが、集団的自衛権行使の閣議決定や戦争法を通すということでした。しかし本当に多くの国民が立ち上がって戦争法の廃止を求める、あるいは戦争法を成立させない大きな運動が盛り上がってきました。
 国会前のデモで大活躍をしたシールズの大澤さんのスピーチを紹介します。「この夏、普通だったことがどんどん普通じゃなくなりました。昨日までファッションの話しかしなかった学生が政治を語り始めた。ほとんどパソコンの前から動かなかった学者が、雨に打たれながら路上に立った。多くの芸能人がタブーを破り政治的な意見を表明した。あるサラリーマンは金曜の会社帰りは街宣に立ち寄るようになったし、スピーチを聞いた彼女は通り過ぎようとした恋人を引き留めた。友だちは初めて来たデモで黙ってプラカードを掲げたし、臆病な私が国会前でマイクを握った。当たり前に順応するのではなく、何を当たり前にしたいのか常に思考し行動し続けること、どうやらそれだけが未来を連れてきてくれるようです。空気を読んでいてはいつまでも空気は変わらないんです。そのことを、デモをするたび、街宣をするたび一緒に声を上げる、名前も知らない人たちが、その勇気でもって教えてくれました」。
 安保法制反対の運動の生み出した成果を、本当に鮮やかに現しているスピーチだと思います。当たり前に順応するのでなく、当たり前というものを自分がつくっていくのだという主権者意識、民主主義が目覚めたことが、私はこの間の運動が生み出した一番大きな成果だと思っています。

弁護士も学者も憲法違反と

 日弁連の全都道府県が憲法違反だから反対だという決議を上げました。これはすごく画期的なことです。大多数の弁護士というのは企業法務といって大企業お抱えの法律事務所で、海外に大企業が展開できるように契約書を作ったり、M&Aの吸収合併をやったりしているのです。そういった弁護士も含めて、さすがにこれは憲法違反じゃないか、許せないということで決議を上げ、憲法学者も9割以上が憲法違反だと言いました。
 その流れの中で、学生たちもこんな横暴を許しちゃいけないのじゃないかという危機意識から立ち上がり、私たちが言うことを聞かせる番と、民主主義が大きく目覚めたことがこの間の運動の最大の成果だと思います。

緊急事態で財産奪われる


 「緊急事態宣言」の条項ももちろん草案に作られています。緊急事態宣言というのは「緊急事態だ」と安倍さんが一言いえば、憲法の権利をすべてストップさせることができるということです。皆さんの財産を奪うこともできます。ここは戦争のために使うから、あなたの家はどかしてねって言って、皆さんの家が破壊されるとか。あるいは戦争のために緊急にお金が必要になった。各自治体、「住民から500万円ずつ集めろ」とか言われれば皆さんの財産が、じゃあ1人1軒につき10万円ぐらい拠出してよって言われたら、皆さんお金を出さなければいけないとかまで規定できるのが緊急事態条項です。
 この緊急事態条項において内閣が一方的に法律を作って、皆さんの権利を制限できるのです。財産拠出法とか作れるわけです。それに皆さんは従う義務まで規定されています。このような形で戦争する国づくりを完全に完成させようとしているのが草案の柱の一つということです。


感想文から

・自民党は自主憲法の制定と言っているが、ただ現憲法の解釈を変えているだけで、よく自主憲法と言っているものだと思う。
・白神さんが訴えているように、私たちの小さい声でも力の限り空に向かってあげていくことが必要だと思った。
・白神先生は若くて元気がよくて話が分かりやすい。本当に励まされました。
・安倍政権の改憲の中身が分かり、戦争ができるだけでなく個人の権利まで制限されるとは知らなかったです。
・市民が政党を動かしたことはすごいぞ。また、それに答えた野党もすごいと思った。政治家たちは野党も与党も市民の声を聞いてほしい。
・弁護士3年目という人とは思えない力強さと話が整理されていて、あらためて自民党改憲草案の怖さを実感した。
・自民党の改憲草案は「日本会議」の考え方が占めているように思います。日本の長い年月をかけて「経済的徴兵制」に向けて着ちゃくと準備を進めてきたように思います。


幹部学校 参加者の声

知らないこと学べました
 【清瀬久留米・防水・石塚貴紀記】初めて参加させていただきました。つねづね思うのが、低料金で請け負う業者が多くなったなということです。結局は職人を泣かすことになると思います。私はあまり安い額では請けません。それは自分の首をしめるとこになるからです。安いとたくさん働かなければならず、身体が資本の建設業で体を壊しては仕事ができません。
 今日は私の知らないことなどいろいろと勉強になりました。各支部の活動の経験を支部に持ち帰り、自分たちで、出来ることを考えたいです。
 1回ですべて理解できるとは思いません。今後1年間、試行錯誤し、また来年には成長して参加したいと思います。

各支部の実践を見習いたい
 【足立・大工・川島俊一記】今年から常任執行委員になって、幹部学校初参加です。4月に行なわれた新任役員研修に続いて、本部や各支部の中心になっている方がたと接しましたが、皆さんが仕事や組合運動に精力的に取り組まれていることに感じ入るとともに、見習っていきたいと強く感じました。
 午前中の全体会では、杉並支部の荻窪消防署と「災害支援ボランティア」を締結したフロア発言が特に勉強になりました。午後は仕事・技術分科会に参加しました。一日を通し、東京土建の建設産業振興と仕事確保への取り組みをあらためて学び、今後もその運動の一端を担っていければと考えています。

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