建設業ではたらく仲間をサポート

FAX:03-5332-3972 〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図
メニュー

○ 戦争に向かっている教育/高原数則・東京民研副議長

国民に国防義務を徹底
「戦争反対」は国策への妨害

 改憲策動が強まる安倍政権のもとで、教育現場ではどのようなことが起きているでしょうか。東京の民主教育をすすめる教育研究会議(東京民研)の高原数則副議長に寄稿していただきました。

PHOTO
靖国神社の爆弾三勇士のレリーフ。国策のため教科書に取り上げられた

 「民間企業の従業員に防衛業務を担わせる」「有事において、防衛省が他省庁などを活用して任務を遂行できる態勢を整える」。これらは、自衛隊の上級幹部教育機関(統合幕僚学校)が研究成果をまとめた報告書(12年3月)で『国家総動員体制』について述べた部分です。
 この報告書にはアメリカとの協力のために集団的自衛権行使の容認やPKOでの武器使用基準緩和、武器輸出解禁なども提言され、そのどれもが安倍政権によって強行されています。それに止まらず、教育についても「国民全体の安全保障観を確立するためには、まず、公教育における周知に取り組むこと…盲目的戦争反対…など国策妨害を教育するのではなく」などとして、教育に介入する姿勢を明らかにしています。
 これに応えてか、文部省は教科書の検定基準を12年に変えました。その結果、昨年度採択された中学社会科教科書には「国民に国防の義務がない徹底した平和主義は世界的には異例」「国際平和や協力のために(自衛隊が)積極的に海外で活動できるよう法律を整備することが議論されている」などの記述が多く見られます。
 そして、安倍自公政権は「戦争をする国」を支える国民づくりのために、「教育再生」で戦後民主教育を根底から壊す動きを進め、次期学習指導要領の基本方向について以下の様な議論を続けています。

知識の理解と学力は不要

 現在、学校の授業は各教科の学問的な体系に基づいて行われています。しかし今、学問の体系からは離れて、財界や政府がつくり出した社会の姿を支えるための資質・能力を教育でつける議論が進められています。そこには子どもたちの姿と願いなどは一切なく、「学力」や「知識の理解」という言葉すらありません。
 子どもたちに「学力」(習い覚え、体得した知識によって養われた力)をつけるのではなく、国が決めた特定の資質・能力をつけさせる、そのためには知識の「理解」はいらない。あるのは国が決めた特定の社会像と力を子どもたちに押しつける教育に作り変えることだけです。そのために特定の授業方法で、全国の学校で画一的な授業を行なうことも議論されています。
 授業や学校生活では「学習に取り組む態度」「感情や行動を統制する能力や感性」「優しさ」など態度や人間性までを成績の材料にし、例えば意見発表では「話しかたは人をひきつけるか」「アイ・コンタクトが発表の間維持されているか」「質問に明瞭に答えているか」などの態度が5段階で評価されます。この様な評価をするために特定の授業方法をすべての授業に導入しようとしているのです。当然の結果として知識の「理解」は評価の対象からもはずされています。

人間のあり方は国が決める

 さらに新設される「道徳科」では、20項目ほどの心の持ち方・人間のあり方も国が決めて、子どもたちがその通りに実践・習慣化することを目的としています。ここでも子どもたちは行動や態度が評価されることになります。「道徳科」は「学校の教育活動全体(教科の授業や生徒会なども含む)の要」に位置付けられています。そして各学校で学習指導要領通りの教育活動が行われているのかを国と各地方の教育委員会それぞれが定期的に把握し、改善について助言をする態勢の議論まで行なわれています。国が各学校の教育内容に直接的に踏み込むことも可能になります。
 特定の社会像を押しつけられ、道徳科を頂点とする全ての授業・学校生活で行動・態度や人間像が強要され、評価される息苦しい「教育」では子どもたちのかけがえのない個性や自主性は育ちません。
 これでは子どもたちが苦しむだけでなく、国の言いなりになる国民づくりにつながるのではないでしょうか。

> 記事一覧へ戻る


電話:03-5332-3971 FAX:03-5332-3972
〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図