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○ 自民党改憲草案と安倍政権の憲法改悪の方向性/ジャーナリスト 斎藤貴男

 8月19日、東京土建は日本教育会館一橋ホールで、ジャーナリストの斎藤貴男さんを招いて「憲法改悪阻止、戦争法廃止、憲法を生かして一人ひとりが豊かなくらしを」学習・決起集会を開催しました(参加者458人)。斎藤貴男さんの講演の他、板橋支部と村山大和支部から活動報告を受け、白滝書記長提案の行動提起を全体で確認しました。斎藤さんは(1)戦時体制へ、(2)改憲潮流をもたらす国策「インフラシステム輸出」、(3)??アベノミクス_が夢想する日本経済と雇用・教育の将来像、(4)失われゆくジャーナリズムの「権力チェック」機能、(5)「新しい帝国主義の時代へ」で本当によいのかのテーマで講演されました。そのなかで自民党改憲草案と9条改憲をめぐる話の大要を紹介します。(文章・見出しとも編集部の責任です)

徴兵制の道を開き
表現の自由は制限する

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改憲は許さないと決意を固めた

 自民党は民主党が政権をとっていた2012年4月に日本国憲法改正草案を発表しています。これを見れば彼らがどういう国にしたいのか一目瞭然です。仮に今、憲法改正の国民投票だとなってこれをそのまま入れてくるかは別にして、自民党としての考えは明らかです。
 それによれば、天皇は象徴ではなく元首である、9条は変える、徴兵ができない根拠となっている18条、何人も苦役につかされることはないという条文は、社会的あるいは経済的な苦役にと書き換えたいとしている。社会的や経済的でない苦役なら構わないのかということになります。
 表現の自由を定めた憲法21条は今までは公共の福祉に反しない限りという条件が付いており、これが表現の自由をめぐる裁判では、それを根拠に表現の自由が侵害されたのですが、自民党の改憲案ではそんなものではない、公共の福祉ではなく、公の秩序に反しない限りとなっています。公安警察的な発想で表現の自由がいくらでも取り締まることができる。もちろん労働組合の活動にしてもそうだということです。
 そのほか、財政規律の健全化という条文もあり、国は財政を健全に保たねばならないという国に対する義務が課せられる。財政が不安定になったら消費税を増税しなければ憲法違反という理屈が導かれかねないということです。
 きわめつけが憲法102条の新設です。今ある99条を変えるということですが、今の99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」ですが、これをその条文はそのままにして、その前に102条として「すべて国民はこの憲法を尊重しなくてはならない」という条文を新設するといっています。

立憲主義を全面否定
生き方マニュアルに

 これが一時ずいぶん問題となった立憲主義の問題です。今でも99条は公務員に憲法尊重の義務を負わせている。立憲主義の考え方から憲法というのは国家権力を制限するためのルールだという考え方にもとづくものです。ところがこの自民党の憲法改正草案は、すべての国民は守れ、権力を縛るためのものではなくて、まず国民を縛るためのルールだという位置づけです。
 これは相当に恐ろしいことです。この条文がもしも新設されると、憲法の中でどんなに無茶なことがうたわれたとしても、それを私たちは守らなくては憲法違反だということにされてしまいます。つまり国家権力の制限規範という立憲主義の考え方から、国民の生き方マニュアルというようにしたいということです。
 9条は戦争放棄を定めたものですが、自民党は②項を削除し、戦力は保持するし、交戦権も認めるという前提で、前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではないとしたいといっています。
 集団的自衛権の発動を妨げないとして、次の条文を追加する。「我が国の平和と独立並びに国民の安全を確保するために内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」。国防軍は国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行なわれる活動や公の秩序を維持するための活動であればやってもよい。つまり治安出動もできる。イラク戦争のようなときに、一緒に戦争するのが正しいということが自民党の改憲草案ではうたわれています。

9条改正の準備整え
海外権益確保で軍事行動

 現実はすでに9条改正のための準備を整えています。小泉政権の2005年以降、在日米軍再編計画が進められています。米海軍横須賀基地に原子力空母が配備され隣の海上自衛隊横須賀基地と常に連動して訓練を行なう。米空軍横田基地には府中市から航空自衛隊航空総隊が移動。在日米陸軍キャンプ座間基地には陸上自衛隊の中央即応集団司令部が移り同居しています。
 首都圏の在日米軍司令部には日本の自衛隊の司令部も同居あるいは隣接して一緒に行動しています。自衛隊が戦争しなかったのは9条があったからです。9条2項が削除され、条文案が実現したら、アメリカの戦争で一緒に戦争しなかったら憲法違反ということにされかねません。
 安倍政権が9条を変えようといっているのは、何も中国の脅威や北朝鮮がどうだとかのためだけではありません。彼らには目指したい国のあり方があります。
 安倍さんは軍国主義者だとか単なる対米従属の売国奴だといわれています。この二つは一見矛盾していますが、全然矛盾していません。むしろこの二つは補完関係です。

アメリカに守られ大日本帝国ごっこ

 安倍さんはA級戦犯の祖父のように大日本帝国を復活させたいと考えていますが、そのままではアメリカは許さないので、アメリカの手のひらの上で大日本帝国ごっこをやりたがっています。
 そして経済の問題です。少子高齢化が進み内需が減るので外需を拡大して大企業を食べさせようとしています。ODAを活用して急成長する国へインフラシステム輸出をすすめ、これに二つの意味を付け加えています。海外の資源権益の確保と、在外邦人の安全です。資源のある所に紛争もあり、在外邦人の安全を国として守ろうと、それには軍事力だということです。
 2013年1月のアルジェリアのテロ事件のとき、中谷前防衛相は、アメリカは何かあれば軍隊が駆けつける、ビジネスマンは安心して仕事ができる。日本もそうならなくてはならない。要するに9条が邪魔だといいました。安倍さんは大日本帝国ごっこをやりたい。同時に多国籍企業が世界中でビジネスを行なうための軍事力強化、日米同盟の強化、集団的自衛権の容認というロジックです。

「戦争は許さない」参加者の決意

悲惨な戦争は繰り返さない

 【西多摩・設備・丹野俊彦記】安倍政権が戦争する国に進めようとすることに怒りが治まりません。
 71年前、私の幼い時に罪なき人びとが殺し殺された悲惨な戦争の思い出が蘇えります。人も物も徴用され、空腹とB29の空襲に逃げ惑った時のような恐怖を2度と繰り返させてはいけません。
 自公政権は他国へのインフラ輸出を推し進めているそうですが、政権の頭のインフラ(構造)を変えるべきです。日本は格差が広がるばかりで社会的弱者はますます生活が厳しくなるばかりです。憲法改悪阻止、安倍政権打倒でがんばりましょう。

草の根運動コツコツと

 【足立・土木・中川由美子記】斎藤さんのお話で、今日本がどの方向に向かって政治や経済を動かされているかがわかりました。国民には経済がよくなれば、生活が豊かになると耳障りのいい話だけを聞かせているうちに、憲法改悪、原発再稼動、戦争法などすすめています。
 戦争に向かって日本は動いているのを一言も話さないということをこの話を聞いて知り、小さい草の根運動でもコツコツとやらなければ子や孫の世代に平和な世界を残せないと思いました。とてもいい講演会に参加させていただき、ありがとうございました。

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