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○ オリンピック施設建設と労働組合の課題

浅見和彦専修大学教授
労働安全推進したが
発注者中心のロンドン五輪

 オリンピック施設建設で建設労働組合が果たすべき役割について学ぼうと、全建総連東京都連合会は、8月31日開催の賃金対策活動者会議に浅見和彦専修大学教授を招きました。浅見教授は「2012年ロンドン大会の経験から学ぶもの」と題して講演しました。講演の一部をお伝えします。(記事・見出しとも責任は編集部)

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 ロンドン大会の施設建設で中心になったのがオリンピック施設建設委員会(ODA)です。日本でいえば文部科学省とかスポーツ庁などの組織です。ロンドン・オリンピック・パラリンピック大会法で施設建設に携わる建設労働者の処遇や雇用、人種的に少数派の人や女性を積極的に雇用する目標の枠組を定めました。
 施設建設で労働組合の役割も業者側の役割も重要ですが、結論からいえば、ロンドン大会では、中心となった発注者であるODAが建設コンサルタント会社のCLM(CLMは3社の頭文字)に建設計画のマネジメントをゆだねました。ロンドン市、文化・メディア・スポーツ省、ロンドン・オリンピック組織委員会があって、発注者のODAの意向をうけてCLMが積極的に動きました。
 労働組合は大きく3つに分かれ、土木建築を組織しているUCATTと、一般組合といって建設だけ組織しているわけではないUniteという電工・配管工の組織、GMBという普通作業員、軽作業員を組織する組合があります。
 発注者側と労働組合側とで覚書を結びましたが、すでに労働協約があり、それを最低限の基準にして賃金・労働条件が守られるという仕組みです。オリンピックに限らず、以前から賃金・労働条件が守られていました。
 業者はピーク時で元請が約40社、1次下請けが約3000社です。発注者が元請を指導する形で特に労働安全対策を積極的に行ないました。それを安全衛生庁(HSE)が関与して援助しました。
 労働組合側や業者側が積極的に問題に取り組んだというケースではなく、どちらかというと発注者がかなり中心になってやったという性格がロンドン大会の施設建設の場合はあります。

組合の代表性覚書が認める

 発注者は労働組合にすり寄って、労働組合と仲良くやりながら、施設建設をしたらよいと判断したようです。それで労働組合と発注者が覚書を交わしました。覚書は労働協約ではありません。労使で労働協約はありますので、発注者としては労働組合と覚書という形の文書をつくって関係を持ちたいと考えたということです。この覚書では工期の厳守、予算を守るといっており、賃上げを積極的にやるとはいっていない。工期と予算の枠の中でできることは最大限やるという立場です。
 覚書の中で認められたことは現場での労働者の組織化です。労働者の要求は組合を通して伝えたので、組合の代表性を認めたということになります。現場の事務所などの便宜供与と就業時間内の組合活動も認めました。現場で働く人自体が就業時間内の一定の条件を付しての組合活動を認めますということになりました。

現場委員会を組織化
確認書の締結で労働者支援

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 2020年の東京大会にむけて、厚生労働省は労働安全問題でやる気を示し、関連して安全衛生対策協議会が今年1月にできました。
 業界団体では全建が安全衛生経費をのせるべき、日建連は現場の安全パトロールをやると発言しました。
 労働組合として現場訪問をやる。現場の近くに現地事務所を設置し、宣伝活動ができるのではないか。あるいは工事関係労働者が立ち寄れる場所にする。現場レベルでの現場委員会が組織化され、現場での労使協議ができるようになればよいと考えます。
 日本の場合は労働協約がないのに皆さんは現場訪問をやっている。協約なしに現場での支援活動といえるものができている。
 現場委員会の組織化としてめだつ取り組みができればよいと思います。現場での組合員拡大も当然考えられます。
 関東地協がやっている大手企業交渉で確認書を取っています。確認書は労働協約です。現場の労働者の苦情を受け付けるとか、解決する窓口を労使協調で作ったらどうかと確認書を協約とすることができるのではないか。
 また発注者との間で覚書を締結することが可能なのではないかと思います。発注者というのは国、東京都、組織委員会です。テーマとしては労働安全と適正な賃金です。
 安全衛生対策協議会への組合参加ですが、第1回会合では組合参加がありませんでしたが、第2回会合で建設労働組合の代表の参加が連合からですが実現しました。
 全建総連は現場の人を組織し代表する組合ですから代表性は明らかです。そこは自信を持ってよいと思います。

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