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○ 医療の現場から見える地域医療の現状/竹崎三立東京社保協会長

 第45回東京社保学校(10月16日開催)で竹崎三立東京社保協会長が「医療現場から見える地域医療の現状」と題して講演を行ないました。講演から医療・介護改悪の実態、地域の事例報告、私たちの運動の課題について話された内容を紹介します。(見出し・文とも責任は編集部)

法の限度越し患者に
75歳以上には2割にアップ

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 国の医療政策、介護福祉政策が今後どのように変わっていくのか。
 2017年度の法律を通して2019年以降、75歳以上の方の医療費を2割にします。現在70〜74歳の方たちが毎年、1年たつに従って2割になっています。おそらく現在72歳の方たちは既に2割になっている方がいらっしゃると思います。これを75歳以上まで引き上げます。
 もう1つ、受診時定額負担制度というのがあります。皆さん方にもかかりつけ医がいると思います。全国で95%ぐらいの先生方は患者さんをかかりつけで持っています。患者さんも日ごろ診てもらっている先生がかかりつけ医だと思っていますが、国のいうかかりつけ医は、複数の医者がいて、24時間、患者さんが急変などした時に、対応できる条件をクリアしなければかかりつけ医になりません。
 ところが、そのかかりつけ医にかからないと、「窓口では一定の定額負担を求めます」ということが来年の通常国会に上程されようとしています。当面は100円ぐらいからスタートするようですが、私たちは100円が400円になり、500円がいつの間にか1割になったという歴史を持っています。
 健康保険法では「患者負担は3割までを限界とする」という附則がありますが、これは法律の限界を越えて患者負担を求めるということです。日本は国民健康保険で、最大払っても3割という社会であったと思ったら、いつの間にか4割、5割の社会になろうとしている。受診料の定額負担制度というものが目の前に見えています。
 もう1つ、参照価格制度の導入があります。日本でも、6割、7割はジェネリックの薬を出していますが、患者さんが「どうしてもジェネリックは嫌だ」といった時に、「その差額は自己負担にします」というのが参照価格制度です。要するに国は、80%以上はジェネリックにしたい。

高額療養費は負担増
すすむ介護の保険はずし

 高額療養費制度は医療機関にかかった時に、外来だと現在、現役並み所得の人は全額4万4000円を超えると、それ以上は払わなくてはよくなっていますが、これが現役並みの方でも一挙に負担額を増やすという見直しの結論を、今年の末ぐらいまでに出そうとしている。人によっては、月額25万円以上になる方も増える可能性があります。
 介護保険制度の問題では要支援の1、2の方が、日常生活支援総合事業に移行しています。来年2月、あるいは4月からはすべての日程がスタートしますが、現状は大変混乱をしています。
 もう1つは、今、要介護1、2の方、全国で約4割、173万人ぐらいの方が利用しておりますけれども、その方たちの福祉器具、それから生活援助について、これを介護保険から外そうということが現実的に議論されています。
 今、介護保険料を40歳以上の方が負担していますが、それを30歳、20歳と引き下げろということも具体的に議論を始めているのが現状です。

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進む通院自主抑制
1日3回の薬を2回に減

 杉並区にある私の診療所の状況を説明します。杉並区は高齢者の単身世帯が11.7%です。
 患者さんが自宅で孤独死したと警察から連絡がありました。96歳の女性でした。立派な家に住んでおり、立派な息子さんもいますが、息子さんは全く別の所にいました。その女性は大体1カ月半ぐらいごとに外来にかかっていたのですが、昨年亡くなり、1週間ぐらいで見つかりました。これが東京都の23区西部の実態です。今後、介護の重要度というのはだんだん急速に増えてきます。
 もう一つ、うちの診療所の1件当たりの通院回数をみると、2007年では月に1.9回通っていましたが、去年は、1.36回ぐらいになりました。
 これは何かというと、患者さんたちが「できるだけお薬を長く出してほしい」ということです。本来なら、2週間に1回ぐらい来てもらうのが最低でした。今は、それが3週間になり4週間になり、時には「もうちょっと出してくれませんか」と。「なかなか通うのが大変です」ということが一つ。
 もう一つは、患者さんの薬の飲みのばしです。本来なら1日3回飲まなければいけない薬を2回しか飲まない。経済的理由もあって医療機関に通う回数がこのぐらいの頻度で減ってきている。

深刻な看護士や介護士不足

 2002年からの約14年間の診療報酬の改定率をみると、この12年間ほどにマイナス10%以上です。厚生労働省の発表ですから、実際にわれわれが計算すると、これの3割ぐらい診療報酬が減ってきました。
 診療報酬が減って、なおかつ患者さんが減ってきているわけですから、実態は看護師さん1人、事務1人です。ギリギリ職員を絞って何とか経営を成り立たせようという先生方がいるということもぜひ知ってもらいたいと思います。
 胃ろうを造設している患者さんの事例ですが、1週間ほど定期的にショートステイを利用している患者さんがいました。ところが、最近、施設からお断りをされました。
 なぜかというと、「看護師や介護士が不足しているために、胃ろうの患者さんをお受けできなくなりました」。これが今の地域の実態です。地域は、特に看護師、介護士が不足している状況です。

地域社会の再構築
社会保障に金使うべき

 格差や貧困が拡大する中で、充分な医療、介護が受けられない国民がますます増えている。さらに今、国が医療や社会保障制度で国民の自己責任を強制する中で、ますます医療や介護から疎外される人たちが出てこようとしています。超高齢社会・人口減少社会で、医学、医療がどんどん進歩していき、医療費、介護費がかさむのは避けられません。その費用を一体どう負担をしていくのかということでは国民的な合意が必要です。若者世代も含めて、どう負担をしていくのか。これは今一番大きな課題です。
 この中で、税負担の公平化ということがあります。今は昔に比べてあまりにも累進課税が取られてないということがありますし、大企業の法人税がどんどん値下げされてくるような状況。税負担の公平化をきちんと論議をしないといけないのと同時に、公共事業や法人税の減税じゃなく、もっと国民の医療や介護や福祉、教育に金を使うべきです。使い方に対する国民の監視が必要です。
 同時に、医療や介護、子育て、教育に金を使うということは内需を活性化させるわけです。そういう合意作りです。今のような外需頼み、株価頼みの新自由主義経済政策は見直さないといけません。
 それから同時に下からの地域づくりをしていかないといけません。地域社会の再構築が求められている。私の経験でも立派な家に住んでいても、家の中に入ると、いろいろな困難を抱えている方がいらっしゃいます。地域での仲間づくりを同時にやっていかないと、この問題は解決していかないと思っています。そういう意味で地域での社保協運動の発展が求められています。

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