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○ 大企業は優遇・庶民は増税

全労連賃金・公契約対策局長 斎藤寛生

 第21回立川地域税制・税務行政研究交流集会(12月4日開催)での全労連賃金・公契約対策局長の斎藤寛生さんの講演、「逆立ち税制が広げる格差と貧困」から内容の一部を紹介します。(文責・編集部)。すでに「けんせつ」1月1日号で格差と貧困についてのお話しを紹介しましたが、今回は税制の問題点の紹介です。

生存権と財産権が基礎
納税は福祉、社会保障のため

 「税負担が重い」「どう使われているかわからない」「払いたくない」など税金をめぐっていろいろな声が出ています。なぜこのような声が出るのだろうか。それは納めた税金が自分たちのところに還ってきている実感がわかないからだと思います。それが「重税感」「疎外感」「不信感」になってきています。税金はなぜ必要か、どう使われるべきか、日本税制の問題点について考えてみます。
 大きな問題が源泉徴収です。源泉徴収されて振り込まれた金額が給与の金額だと思って、差し引かれている税額に気が付かない。自分がいくら税金を納めているかわからないから、重税感がわきません。確定申告している人はいくら税金を払っているかわかっているから、自分に還ってきていないという感覚になりますが、サラリーマンはそういう感覚がもてません。そこが日本の税金運動の大きな阻害要因になっています。

申告納税と応能負担は大原則

 憲法第30条に定められている納税の義務に対して、納税の権利が国税通則法第16条で定められています。申告納税方式として、納付すべき税額が納税者のする申告により確定するとされています。戦前はお上が税金を決めて、払いなさいと命令しました。戦後は民主化の中で、国民が自分で申告をしてその金額が税額として確定すると大きく変わりました。
 日本の税制では応能負担原則、つまり能力に応じて払うという大原則があります。これは憲法第25条の生存権、第29条の財産権の理念に基づいています。応能原則とは経済的な負担能力に応じて税負担すること。所得税や住民税では高所得者には高い税負担、低所得者には低い負担。同じ所得であっても給与などの勤労所得は税の負担能力が低いため軽い負担に、利子・配当・不動産などの資産所得は負担能力が高いため重い負担に、最低生活費、生存権的財産には課税しないなどを原則としています。
 生きていくうえで最低限かかる金には税金をかけないということです。生活保護を受ける人は非課税で、生活保護以下の賃金の人には税金がかかるという無茶苦茶な制度です。個人の生存権を保障していくのが社会正義です。

庶民犠牲の優遇税制
一番企業が活躍しやすく

 税の使われ方に関する原則・権利があります。憲法の前文で「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」とされ、憲法上はすべての税が福祉、社会保障目的税であり、税金はそういうふうに使われるべきだとなっています。ところが今、第一に国債の返済、第2に防衛費で社会保障はどんどん減らされています。納税の義務は国民が平和に暮らすためだということを学校でも教えません。
 税金を納める力がありながら納めないことがまかり通っています。パナマ文書を震源にしたタックスヘイブンに反発の声が多くなっています。反社会的組織との関係や個人情報漏洩による人権侵害、犯罪行為の隠ぺいなどとの関連も問題になっています。
 安倍首相は2013年2月28日の施政方針演説で、「世界で一番企業が活躍しやすい国をめざす」と述べました。その流れにのり、大企業や富裕層は国家権力に干渉されない権利を振りかざし、財産権の自由だとして様ざまな儲けを存分に味わっています。この優遇税制は庶民の重税と生活犠牲の上に進められています。安倍政権は2016年の税制改定で法人税率をまた下げました。中小企業の70%は赤字です。法人税を下げて喜ぶのは大企業だけです。
 消費税が導入されて国庫に入ったのが305兆円、その間の法人3税の減税が262兆円です。福祉のための消費税といって導入しましたが、実際使われたのは大企業の減税でした。その結果、大企業の内部留保だけ増えて313兆円、国家財政の3年分です。

消費税が税制くずす
軽減税率で国民は負担増

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 直接税中心原則が消費税の導入で打ち砕かれました。一般会計の税収をみると、消費税が法人税を軽々と追い抜いています。消費税は今は8%ですが10%になれば間違いなく基幹税になります。もともと戦後の税制の基本はシャウプ勧告によって所得税、富裕税をなどの直接税中心主義を原則とする、不公平税制を基本的に容認しない形での応能負担・公平主義、地方自治の尊重、税務行政の民主化・合理化の4点を柱として一定の民主的税制の確立の出発点としました。しかし88年の消費税導入でその大原則に大穴が空きました。
 消費税負担率は年収250万円未満の人は6%で、1500万円以上の人は1.99%です。さらに消費税は赤字で価格に転嫁できなくても、売り上げが1000万円を超えれば納税義務が生じる、中小業者にとっては経営破壊税です。安倍首相は参議院選挙対策として国民をだますために、消費税10%への引き上げを2019年10月まで延期しました。しかし延期ではなく中止することこそ最大の景気対策です。増税時に導入をねらう複数税率と免税業者を取引から排除するインボイスも撤回させる必要があります。
 自民・公明両党は2016年の税制「改正」大綱で、消費税率を10%に引き上げる際、飲食料品、新聞は消費税率を8%に据え置くとしました。軽減税率とは何かということですが、8%に据え置くのを軽減とは言わないのです。飲食料品を8%に据え置くことを「軽減税率」と呼ぶのは明らかな茶番です。我が国の消費税率はヨーロッパに比べても低くないです。食料品の税率はイギリス0%、ドイツ7%、フランス5.55です。日本は食料品にも8%の税率を適用していて世界的に見ても消費税率は異常に高いです。イギリス、ドイツ、フランスでは医療・教育は非課税です。また生活にかかるものは低税率です。日本では毎日食べるものや医療に税金をかけており異常です。消費税は生存権を侵す税金でもあります。
 軽減税率が茶番である最大の理由は、軽減税率が国民の消費税負担を和らげないことです。軽減税率の導入で8%と10%の2段階になりますが、適用事業者が8%の消費税を負担するだけのことで、国民の税痛感は変わりません。さらに飲食料品の製造原価の材料費などに10%の消費税がかかるので販売額を上げないと成り立ちません。軽減税率といいながら実は物価が上がり、国民の負担はより重くなります。

還付で儲かる大企業

 日本の大企業は各種の租税特別措置によって実際の税負担率は低くなっています。巨大商社が実際に支払った税負担は、実効税率が35%から40%であった2010年度から2014年度までの5年間で三菱商事が7.9%、伊藤忠商事が2.2%、三井物産がマイナス0.7%とタダ同然でした。このようにタックスヘイブンの恩恵に浴した大企業や富裕層は堂々と税逃れをしています。すぐに手を付けるべき課題が「タックスヘイブン国日本」の改革です。
 大企業優遇税制は法人税にとどまりません。輸出売上げに対する消費税率は8%でなく0%です。この0%税率を適用したトヨタ自動車は消費税を1円も払わずに、2015年3月期で推定4887億円の還付を受けています。2兆円も利益を上げている企業が5千億円近い消費税の還付を受けているのです。

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