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○ 70年をふりかえって/書記長 白滝誠

健康保険を要求の柱に
職種・階層超え居住地組織で発展

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白滝誠書記長

 東京土建の歴史の教訓について振り返り、2点に絞ってお話しします。一つは東京土建の組織原則である産業別個人加盟の居住地組織について、二つ目は健康保険と組織作りの関係についてです。
 結成時、産業別個人加盟を大原則に位置づけたのが東京土建です。戦前あった労務報国会のようなボス支配であった職業別組織の弊害に陥らず、階級的で大衆的な組織を目指して発足しました。そしてもう一点、居住地組織は働き先や現場が変わり、不安定で流動的な建設職人、労働者を対象に仕事と生活に関する問題を解決する上で最適な組織であったのではないかと思っています。
 結成後やがて配給の労務加配米の受給者群を作りました。労務加配米の配達で幹部が仲間の家を一軒ずつ訪ねて会話をし、機関紙も配った、細い蜘蛛の糸のようなつながりができた、これが組織の出発だと言われています。
 1950年代には、支部の結成をすすめました。地域と行政区を意識した居住地を基礎に組織作りが進みました。そして60年代には組織、居住地再編を断行しました。地縁血縁から近代的な組合へ脱皮をしたことが支部を確立していく要因になったと言われています。自前の組織と運動を構築し、役員・書記局体制を拡充、組織の飛躍的な発展の土台を築いたのです。
 居住地再編は「嵐に揺るがぬ組織」作りを目指したものですが、親方と異なる支部、分会に所属した職人たちが協定賃金運動や資格取得の運動にかかわることで、自覚的に成長していきます。ちょうど高度成長期、労働運動や青年運動が活発になっていきます。そこに重なって、他産業の労働運動や社会運動にも連帯、参加し、東京土建全体が大衆的に発展していきました。仕事も職種も階層も多様な人たちが一丸となって結集し、一人一人を大切にする組織運営に心をくだき、力を合わせて苦労と工夫を重ねてきたのが、今日の強く柔軟で人を育む組織へと成長できた教訓だと思います。
 次は健康保険と組織作りです。戦前、会社員や工場、鉱山の労働者には健康保険ができてきました。しかし建設労働者、親方には健康保険が適用されません。すでに1930年、満州事変の頃に警察の弾圧を逃れながら組合結成の準備をすすめていた外沢謙次郎さんや伊藤清さんたちは、その段階から健康保険完全保障を要求項目に掲げてきました。結成大会の綱領の柱にもこれが掲げられました。「ケガと弁当は手前持ち」の解決を目指したのが東京土建の出発点だと思います。
 50年代初頭には日雇健保を作る運動が本格化します。当時、公営国保はまだありません。子どもの急な発熱には、夜中でも遠くの親方の家を訪ねて、手間賃を前借する例がたくさん見られました。経済的な従属、精神的な隷属、惨めな存在だったと言われています。日雇健保は運動によって労働者が初めて勝ち取った健康保険です。被用者保険として国が運営し、組合を事業主とみなす擬制適用、これは支部が事務取扱をし、支部単位でまとまり結集し、業務を利用することで組織を拡大してきました。まさに町場の職人の要求に見合った形態だと思います。
 しかし政府は赤字を理由に廃止を打ち出しました。廃止撤回闘争を果敢にたたかい、擬制適用は削られましたが、このたたかいの中で現在の建設国保を認めさせ、土建国保が作られてきます。その後、補助金獲得闘争に全力を尽くしていき、10割給付によって組織をふやしました。
 しかし次第に10割給付への制約が強まり、保険料も連続引き上げを余儀なくされます。組織拡大に困難さをもたらし、2000年、組織をあげた議論の末、10割給付をやめることを決め、翌年には8割給付、償還払い・委任払いの現在の制度に近くなっていきます。その後2004年には家族も入院10割給付の付加給付を勝ち取ることができ、V字回復、13万人突破の原動力になりました。
 現在は、社会保険未加入対策で協会けんぽとのせめぎ合い状態にあります。土建国保のこれからの課題は、給付率を守る、そして医療保険を守っていく、社会保障拡充の運動を連帯して作っていきたい、またゼネコンには健康保険として認めさせ、保険料相当分の別枠支給を認めさせる事が重要だと思っています。
 東京土建結成70年の今日、「たたかってこそ道は開ける」を合言葉に展望を開くため、総合5カ年計画を遂行しています。今年は憲法施行70年です。「建設産業は平和であってこそ成り立つ」。長年、委員長を務めた伊藤清さんの遺した言葉です。この言葉を受け継ぎ、建設産業と地域に根差した大きな東京土建を目指すことを皆さんとともに確認したいと思います。

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