建設業ではたらく仲間をサポート

FAX:03-5332-3972 〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図
メニュー

○ どうする都議会議員選挙

都政問題研究家 末延渥史
豊洲新市場移転は中止
都政史に残る汚点の解決を

 6月23日告示、7月2日投票で都議会議員選挙が行なわれます。大きな争点となる豊洲新市場について都政問題研究家の末延渥史さんに寄稿していただきました。

PHOTO
築地市場の手前で工事が中断している環状2号線

 昨年11月に開場予定であった東京都中央卸売市場・豊洲新市場。しかし、昨年7月の都知事選挙で知事に就任した小池百合子知事は、“いったん立ち止まって考える”と表明、8月には市場棟の地下にあるはずのない「地下空間」の存在が発覚、くわえてそのたまり水から高濃度の有害物質が検出されるに至って、小池知事が11月開場の延期を決定し、今日に至っています。
 現地では、ゆりかもめの「市場前駅」から各市場棟に連絡するデッキは閉鎖され、市場の看板には覆いがかけられ、千客万来施設の予定地は更地のままで放置されています。現在、築地市場で営業が継続されていますが、移転を予定していた業者は、豊洲移転に伴う支出や維持費など二重の負担に苦しめられているのです。
 小池知事は、また昨年9月に「豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議(以下専門家会議)」「市場問題プロジェクトチーム(以下PT)」を設置し、土壌汚染問題、豊洲移転と市場のあり方について、検討と対応をすすめました。ところが土壌汚染問題では、今年に入って地下水のモニタリング調査で環境基準を大きく超えるベンゼンやヒ素などが検出され、都が約束してきた「無害化」が実現できていないことが明らかにされました。また、PTの座長が突如、築地再整備の私案を発表し、築地再整備を議論の俎上にのせましたが、この案はPTでの検討を経たものでなく、しかも臨海副都心救済のための環状2号線の市場内の建設が前提となっていること、座長が「青果は豊洲移転、水産は築地残留もありうる」と鮮魚と青果を分離する構想を発言するなど、都民的議論が求められています。
 さらに小池知事は、今年3月には内部組織としての「市場のあり方戦略本部」を立ち上げましたが、これらの3つの組織に共通していることは、都民及び市場関係者が構成員とされていず、都民参加の道が閉ざされていることです。これは「都民ファースト」といいながら、その実態は都民参加、都民合意の道を閉ざすものにほかなりません。小池知事の姿勢が問われる問題です。
 こうしたもとで都議会は、都民世論におされて百条委員会=豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会を設置しました。

IMAGE

百条委が闇を暴く
石原元知事らの責任明らか

 百条委員会は地方自治法100条にもとづいて地方議会が設置する調査特別委員会。国の国政調査権に相当するもので、関係者の出頭や証言、記録提出を請求する調査権限があり、正当な理由がなく証言もしくは資料提出を拒否したり、虚偽の証言をしたりした場合は禁錮刑を含む罰則が課せられることになります。
 百条委員会は、延べ5日間、石原慎太郎元知事や浜渦武雄元副知事など24人におよぶ証人喚問がおこなわれるとともに、段ボール115箱もの資料が提出されました。資料のなかには、未公開の重要な資料をはじめ、それまで資料が開示されても肝心なところは黒塗りであった資料も含まれていました。
 百条委員会の質疑を通じて、石原元知事の直接の責任と、「私の担当は基本合意(2001年)まで」と証言していた浜渦元副知事が、実際には、2005年7月までの「在任中は最高決定権者」として指揮をとっていたことなどが明らかにされ、豊洲移転が石原知事と側近によるトップダウンですすめられていたことが浮きぼりとなりました。この異常な決定過程に自民党の大物都議が深くかかわっていたことも明らかになりました。
 百条委員会は浜渦元副知事と用地担当であった赤星経昭元都理事の二人を偽証罪で告発することとなりました。しかし、百条委員会での調査は、都民が求める真相の徹底解明にはほど遠く、石原都政以来の「闇」や談合疑惑などおおくの疑惑を残したままです。

食の安全が最優先
築地市場で支障はない

 いま、7月の都議会議員選挙を間近にひかえて、豊洲移転派の反転攻勢が強まっています。「6000億円もかけたのに」「築地こそ汚染されている」などの宣伝です。確かに、豊洲新市場の建設には、巨額の資金が投じられましたが、食品を扱う市場でなにより大事にされなければならないことは、食の安全です。その点について、東京都の対応は、深刻な有害物質を地下に残したまま、盛り土で封じ込めるというものに過ぎず、「安全」にはほど遠いものです。
 実際に、市場棟の地下空間のたまり水からは高濃度の有害物質が発見され、地下水モニタリングでもあらたに環境基準を大幅に超えるベンゼン、ヒ素などの有毒物質が検出されているのです。
 5月18日に開催された専門家会議では都の市場長が「無害化するという当時の約束が実現できていないことは事実」と表明。平田健正座長が「専門家会議は環境基準以下にすることを目指していない。汚染は残る」と、無害化を放棄する発言をしたことは「操業に由来いたします汚染物質がすべて除去、浄化され」(岡田中央卸売市場長・2011年2月23日予算特別委員会答弁)としていた東京都の公式見解を覆すものにほかなりません。都民に対する背信行為といわざるを得ません。豊洲市場用地を無害化するには、市場棟を解体し、すべての土を入れ替えるという技術的にも財政的にも不可能に近い対策を講じる以外には方途はないのです。食の「安心」どころか「安全」すら保証できない土地への移転は断じて認めるわけにはいきません。
 一方、築地市場は開場以来の80年余にわたって支障なく営業をつづけており、「安全」が確保されてきました。また首都直下地震への対応の点でも液状化や側方流動(地盤が数メートルも移動する)のリスクが高い豊洲に対して、築地は関東大震災でも安全が確保されていた地盤で折り紙つきです。そのうえで市場内で対応が必要となる汚染物質が確認された場合には万全の対策を講じることは当然です。
 豊洲は汚染土壌だけでなく、軟弱地盤で地震災害が想定されること、交通不便地域であること、“築地ブランド”が失われること、小零細業者が淘汰されることなど、あらゆる角度から見て、食品を扱う市場として適地とは言えない場所なのです。

移転撤回が多数派
都議会がチェック機能を

 このように移転にかかわる経緯は、密室のトップダウンによる豊洲移転の決定過程、東京ガスとの協定、ずさんな土壌汚染対策、徹底した秘密主義、ゼネコンの談合疑惑など都政が大きく歪められ、本来、チェック機能を果たすべき都議会もオール与党がその使命を放棄するという事態を浮きぼりにするものとなりました。
 この「闇」ともいわれる事態を打開したのは、都民の世論と「豊洲移転中止署名をすすめる会(以下・署名をすすめる会)」や「築地市場・有志の会」「築地女将さん会」などの都民と業者・関係者の運動、くわえて地下空間の発見など、いっかんして不正を追及し、豊洲移転に反対、築地現地再整備を求めてきた日本共産党の役割も大きなものがありました。
 2月18日には、「署名をすすめる会」が築地で署名・宣伝の大デモンストレーションを行ない、市民団体や労働組合、都民など3000人が移転計画の白紙撤回を求めました。さらに同会では、41639筆(2回計)の署名を東京都に提出。現在も署名活動を展開しています。
 また、「築地市場・有志の会」が移転日程の撤回を求める署名を集めたところ、築地市場で営業する591店舗の水産仲卸業者のうち、320の業者(5月27日現在)が署名に応じてくれ、4月に行なった無記名のアンケートでは、80%以上が移転スケジュールに反対と記述。さらに「築地女将さん会」では築地で働く水産仲卸のうち393業者から、豊洲市場移転への反対署名を集め都の担当者に提出するなど、業者のなかでもとりくみは急速にひろがっています。
 都民の世論と運動を、さらに全都規模でひろげ、豊洲移転を中止させ、築地での再整備を実現させようではありませんか。豊洲移転の問題は、あらためて都政と都議会のあり方を都民に問いかけるものとなりました。7月の都議選では、都民目線で都政と都議会を真に改革できる議席の前進が不可欠です。

> 記事一覧へ戻る


電話:03-5332-3971 FAX:03-5332-3972
〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図