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○ どうする都議会議員選挙 保育・教育・住宅の争点

 都議会議員選挙の争点を考える第2弾として、保育、教育、住宅について取り上げます。待機児童がつくられない保育、どの子も成長していける教育、安心して住み続けられる住宅は私たちの切実な要求です。専門の方に寄稿していただきました。

広がる待機児童問題
知事の保育施策は企業主体

 【全国福祉保育労働組合東京地方本部書記長・佐々木和子さん】「保育園落ちた!」のブログから待機児童の問題が社会的な問題に広がり、それと同時に子どもの保育をする受け手の保育士の処遇の問題もマスコミがさまざまな形で取り上げています。東京都の待機児童数は、平成28年4月時点で8466人(東京都HP)と前年の同時期の数字より600人近く増えています。反面、保育士はなかなか確保できない状況です。
 保育所増設の問題は、昨年の都知事選の大きな争点にもなり、小池都知事は選挙公約の柱に待機児童解消を掲げ、「多様なニーズにこたえられる保育所の増設をすすめる」と訴え、当選しています。しかし、小池都知事は国家戦略特区諮問会議に出向き、保育所の質を守る基準の緩和を申し出るなど企業本位の保育施策を進めようとしています。4月には「窓のない保育室」を提案し、建築基準法の関係で国と協議となっています。
 実現をしたら、認証保育所などは0歳から5歳までの子どもがいっしょに遊んでいることが多いので、子どもの声、大人の声、外の騒音などで子どもたちが落ち着かない環境に置かれること、東北などのような災害が起きたらどのように避難するのか、と危惧されます。小池都知事の保育施策は、国と同様の規制緩和路線をすすめ、保育の質より企業主体の保育施策といえます。

定着さまたげる処遇の悪さ

 保育現場では、「産休・育休の代替職員募集をしても応募がなく、結果、いる職員でなんとか体制をとっている」「退職補充が見つからず、朝晩のローテーションが増えてつらい」「保育記録などの事務はほとんど勤務外でするしかないのでつらい」と人員確保が難しい中ぎりぎりで仕事をし、足りないところを超勤で対応する職場が増えています。人材派遣会社という手段もありますが手数料が高く、長くは雇用できません。また、全産業の平均より10万円も低いとされている保育士の低賃金や休憩や休みが取りにくいなど、処遇の悪さが確保と定着ができない状況にしています。

公的保育守る公約の実現を

 東京都議会議員選挙の各会派のマニフェストでは(表参照)子育て・保育についても争点としています。しかし、東京地本が事務局団体になっている「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」が毎年「東京の公的保育を守ろう」という趣旨内容の署名を作成し都議会に提出しており、今回も都議会に約10万筆の署名を提出し、民間保育園の増設と保育士の処遇改善を求めましたが、3月の厚生委員会で「不採択」となりました。いま、各会派が出している公約と何が違うのか疑問です。
 今回の都議選では、私たち福祉や保育労働者の願いや要求を実現してくれる候補者を選ぶための資料として東京地本では、「権利としての福祉実現の一票を!」の独自冊子を作り、全組合員に配布しています。各会派、候補者の公約や実績をみきわめて投票に行くよう、呼びかけています。

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予算の使い方変える
一人一人が大切にされる教育

 【都内の教育関係者記】都議選は、子どもと教育、くらし、平和を守る、都民本位の都政・都議会へと転換させる大きなチャンスです。一人ひとりが大切にされる社会・学校を子どもたちに手渡せるよう、選挙に行ってみなさんの声を届けましょう。

35人学級実現は緊急の課題

 東京都の小中学校では、小学校1、2年生と中学校1年生で35人学級が実現しました。すべての子どもに等しくゆきとどいた教育を保障するため、一刻も早くすべての学年での35人学級実現は、緊急の課題です。都議会文教委員会の資料によれば、小学校すべての学年に35人学級をひろげるためには、1375人の教員が必要で、約117億円で実現できます。小1から中3まですべての学年で35人学級を実現するには、さらに835人の教員、約74億円が必要となります。2017年度の東京都予算は13兆円を超えます。予算の使い方を変えれば、小中学校全学年での35人学級実現は、十分可能です。

限界を超える教職員の労働

 マスコミでも報道されましたが、学校現場は異常なまでの長時間過密労働、教職員の限界を超えています。教職員の労働条件は、子どもたちの教育条件に直接つながっています。都が行なう「学力テスト」「体力テスト」に関する業務、教育委員会からの各種調査やアンケートなど、具体的に業務を縮減することや授業の持ち時数縮減をすすめるとともに、正規の教職員を増やすことが長時間過密労働を解消することにつながります。子どもたち一人ひとりとゆっくり向き合いたい。これは、教職員のねがいです。

強化された能力・業績主義

 石原都政の「破壊的教育改革」以来、人事考課体制、能力・業績主義が強化されてきました。そのことが学校の多忙化、学校現場でのパワハラ・マタハラの大きな要因にもなっています。能力・業績主義を見直し、子どものことを第一に考え、協力し合える民主的な学校づくりができるようにすることが重要です。
 また、都独自の給付制奨学金の拡充、私立高校の入学金と施設費の負担軽減、小中学校の学校給食費の負担軽減、就学援助の拡充、そして廃止が計画されている都立夜間定時制4校の存続を求める声が大きくなっています。


住宅困窮世帯が増大

ハウジングファースト実現を

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昨年11月、都営住宅の応募倍率は23倍に

 【建設政策研究所副理事長・坂庭国晴さん】昨年11月度の都営住宅の応募は、募集戸数1600戸に対し、2万5000世帯を超え倍率23倍です。毎年約20万世帯が都営住宅入居を望んでいますが、都営住宅の戸数は2012年の約27万戸から15年では26万4500戸と5500戸も減っています。石原都政以来、都営住宅の新規建設はゼロが続き、ついに住宅数が減となる状況で、現在の応募者が都営住宅に入居できるのに20年以上を要するという異常事態です。
 住宅困窮世帯が増大する中で、都民の住宅要求の最大の柱は都営住宅の新規建設の復活と抜本的な充実・強化です。「都民ファースト」を言うのであれば、まずはハウジングファーストの実現であり、借上げ都営住宅を含めた新規建設・供給策を実施すべきです。
 東京の住宅問題で合わせて深刻な事情は、民間賃貸住宅の高家賃です。2015年の調査(賃貸住宅経営者協会)では、1部屋で6万7000円(全国平均4万8000円)、2部屋・8万7000円(同5万8000円)、3部屋・10万円(同6万7000円)という現実です。東京では平均でも全国より2万円~3万円超の高家賃の実態にあります。
 高家賃負担を強いられている都民に対し、家賃補助を行なうことも喫緊の課題です。例えば、新宿区では(1)「学生及び勤労単身向け」に月額1万円、(2)「子育てファミリー世帯向け」に月額3万円の「民間賃貸住宅家賃助成」を行なっています。しかし、(1)は3年間支給で毎年度30世帯、(2)は5年間支給で同50世帯という限定された補助に止まります。本来は都営住宅に応募しても入居できない民間住宅入居者に対し、東京都が家賃補助を行なうべきです。その財源は、東京五輪の負担金額からも見ても十分あるでしょう。都議選の重要争点として追求する必要があります。
 3つ目の争点は、空き家の利活用です。都内の活用可能な空き家は約66万戸あり、そのうち賃貸用の共同住宅(賃貸アパート、マンション)が47万戸(木造10万戸、非木造37万戸)で7割を占めます(都の算出)。この膨大な空き家の活用は東京の住宅難の改善にとって極めて重要です。国は今年10月から「新たな住宅セーフティネット制度」をスタートさせます。これは、民間賃貸住宅などの空き家に住宅困窮者を入居させる場合、改修費補助(1戸当り100万円)、家賃補助(家主に対し平均2万円)を行なうものです。都はこうした新たな制度を率先して実施し、また上乗せの補助を行なうことが求められます。

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