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○ 憲法守らせる声広げよう

 6月25日、ベルサール東京日本橋で行なった第43回幹部学校では、午後から5分科会と1講座に分かれて学習しました。平和講座の小沢隆一東京慈恵会医科大学教授、産業対策分科会C(建設キャリアアップシステム・税金経営対策)の小田川豊作税理士、それぞれの講演の一部を紹介します。(本文・見出しともに責任は編集部)

総理の自覚なき改憲発言
小沢隆一東京慈恵会医科大学

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いいね!日本国憲法―平和といのちと人権を!
5.3憲法集会(有明防災公園)

 安倍首相が今年の5月3日のビデオメッセージで、「9条改憲」を明言しました。まず、このビデオメッセージというのが、とんでもないものだということをお話ししておきたいと思います。
 安倍晋三さんは、首相、内閣総理大臣です。内閣のトップです。内閣のトップでありながら、あのような発言をしたわけです。しておいて、「いや、これは内閣総理大臣としてではない。自民党総裁としての発言だ」と言ったのです。自民党総裁ならいいだろうという言い分です。
 私は、そんな使い分けはあり得ないと思っています。安倍さんは、ある意味では24時間、内閣総理大臣であるはずです。内閣総理大臣でない時間がもし安倍さんにあるとしたら、それは純粋にプライベートな時間。家族とご飯を食べるとか、ごくごく親しいお友達とお付き合いをするとか、そういう時間は、内閣総理大臣としての仕事を離れた時間かもしれませんけれども、安倍さんのその時間が一番怪しい時間なのです。
 加計学園の理事長とゴルフでもって、プライベートな時間でどんな相談がされているのか。これはとんでもない。実は、安倍さんには、それが非常に重要な政治的意味を持つ時間になっている。まさしく、公私混同、政治の私物化が平気でできるような人なので、純粋なプライベートというのはますますなきも同じなのです。だから、24時間自分は内閣総理大臣だという自覚でもっていてもらわなければ困るわけです。

大臣でない議員のみできる

 内閣総理大臣があのような発言をしていいのか。私は、憲法の立場から言えば、駄目だと考えています。ああいう発言をしていい人がいるとすれば、大臣でない国会議員の場合です。国会議員というのは国会で、憲法改正の案を発議することのできる立場です。「国民のために一生懸命政治をやろうとしているのだが、どうもこの憲法は良くない。変えたほうがいい」。そういう意見を持ったら、説明し、周りの議員に呼び掛けていくべきです。だから国会議員は憲法改正に、いつも問題意識を持って、言ってもいい。
 ところが、国会議員ではあっても内閣の人間になったら、それは駄目だということにしておかないと話のつじつまが合わないわけですが、彼はできていないわけです。内閣総理大臣であれば、自分がやった行動についてはすべて、国会に対して責任を負わなければならないわけです。内閣というのは国会に対して連帯して責任を負うということが、憲法に書かれています。
 ところが、安倍さんが国会で追及された時、「私が言いたいことはすべて、読売新聞が報道してくれているから、よく読んでくれ」と言いました。責任逃れです。読売新聞とグルになっているのも問題ですが、ともかく国会答弁を逃げている。これは、安倍さんが国会に対して責任を負う内閣総理大臣であるという自覚にあまりにも欠けているということです。

3項で「戦争の放棄」失う
「後法が前法に勝る」が大原則

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6月15日、共謀罪法案強行採決に抗議する市民

 安倍さんは今回、「憲法9条に第3項をくっつけて、それでもって今の憲法を変えよう」ということを言いました。3項加憲という話は、現憲法9条の1項、2項をそのまま残し維持した上で、新しく作る3項に「ただし自衛のための必要最小限度の実力としての自衛隊は、持つことができる」とか「設置することが許される」というような条文をつけて自衛隊を合憲にしようという話です。
 「1項、2項は残るから、いいじゃないか」と国民に対して説得をかけてきている。この加憲論というのはまがい物の議論だと言っておきたい。なぜかというと、法律の世界の大原則として、「後法は前法に勝る」ということがあるからです。後法、後から作った法律は、前からある法律に勝るのです。
 実は日本の法律の作り方は、加憲方式を採っていないのです。新しく作る法律と矛盾するから、この条文は削除する。削除して、新しい条文としてこのように書き換えるということを丁寧に官僚たちはやるものですから、日本は「この条文とこの条文が違うことを言っているが、さあ、どっちだ」という心配なく、今ある法律を見れば分かる仕組みになっている。

加憲方式のアメリカ憲法

 ところが、昔書いた条文を残す、それと矛盾する新しい条文を新たに作ることを平気でやる国もあるのです。これは、まさしく加憲。これをやる国は、典型的にはアメリカです。アメリカは、そうやって法律を作っていくところがある。アメリカの憲法にそれが入っているんです。
 アメリカ合衆国憲法修正第18条「これから禁酒法を制定する」という条文だった。「イスラムは原理主義者だ」ということを言われる話がありますが、キリスト教にもある種の原理主義的なところがありまして、「酒は人々の道徳心を堕落させる。道徳的であるためには、酒を断たなければ生きていけません」という考え方がバックボーンにあって、つい作ってしまった。しかしアメリカ人は酒が嫌いだったのではなく、大好きだったわけです。だから、ご承知のように密造酒、密売がはやってしまいシカゴの暗黒街でアル・カポネが暗躍するということになってしまいました。
 結局この禁酒法は、13年の後にやめようということになる。その時に、アメリカの憲法に「禁酒法を導入した修正第18条は廃止する」という新しい修正第21条が入ったわけです。今でも、修正18条と修正21条とは残っています。ではアメリカの憲法で何が今有効な憲法かといったら、禁酒法を廃止させた21条のほうが有効。もう禁酒法は駄目となっています。これが、加憲方式です。
 そうしますと、9条に3項を導入して加憲するというのは、今まである1項、2項はなくされる、なきものにされる。これをちゃんとつかんでおかないと、「1項、2項が残るからいいじゃないですか。条文としては残るんですよ。小幅な改正ですよ」と惑わされてしまいます。

97条の権利行使しよう
権力担当者に尊重擁護させる

 そういう情勢をつくり出す上で、私たちががんばる必要があります。「内閣総理大臣である以上、あなたたちは憲法を守って仕事をやりなさい。政治をやりなさい」と言う必要がある。今の憲法では99条で「天皇以下、各種公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負う」となっています。
 国家権力を担う公務員は、憲法に従って、自分に与えられた仕事をやる。そうでなければ駄目です。国家権力を担当する公務員にどうやって憲法を守らせるか。安倍さん、稲田さん、金田さん、ああいう人たちばかりですから自発的には守ってくれないわけです。そうすると、私たち国民が、これを守らせなければいけない。私たちが持っている権利を行使して、憲法に基づく政治を権力担当者にやらせる、こういうことで私たちは憲法を守ることに貢献する。そのことを日本国憲法は、12条と97条という条文では明記しています。
 12条は「この憲法が国民に保障する自由および権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とあります。「この憲法が国民に保障する自由、権利を、国民の不断の努力によって保持しなければならない」となっている。「なければならない」とちょっと押し付けがましいですが、私たちが持っている権利を自分たちで保持するということです。
 これは日々、東京土建の皆さんが自らの権利・暮らしを自らの力で守っていることの、いわば、憲法のレベルの話です。憲法が保障する基本的人権の意義は、97条のほうで示されています。「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」です。私たちは、将来の世代にこの権利をバトンタッチしていく必要がある。しっかりこの権利を使って守って、より豊かなものにしてバトンタッチする。私たちが権利を行使することで国家権力は勝手なことができないようになる。結果として、憲法は守られるようになるというわけです。

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 図で説明すると、真ん中の「98」というのは憲法98条のことで、「憲法は国の最高法規だ」と書いてある。しかし、98条がただ宣言しただけでは駄目で、98条は逆三角形、不安定な三角形なのです。両脇を99条と97条が固めることで、このくさび型の98条は立っていられるのです。99条だけでは97条側にぱたっと倒れてしまいます。99条を本当に権力担当者に守らせなければ、そこがぐずぐずになってしまいますから、私たちが権利を行使して、国家権力担当者が仕事をする時に憲法を守って仕事をさせることが肝心で、そうやれば初めて憲法というのはしっかりと守られるようになるわけです。
 その実感を胸にぜひこれからも憲法を守るたたかいを大いに、東京土建、また周りの人たちとの間で進めていっていただきたいと思います。

今年か来年が勝負に
臨時国会に提出企む与党

 安倍首相は「この秋の臨時国会に自民党の改憲案を出したい」と言っています。「オリンピックを新しい憲法で迎えたい」などと、本当に勝手な思いを言っていますが、多分、勝負は今年と来年、そこに見定めているのだと思います。
 といいますのは、来年の12月までには総選挙をやらなければいけません。衆議院の任期が来年の12月で切れますから、その前に解散して総選挙をやるか、任期切れで総選挙か、どちらかです。その総選挙で、改憲派が3分の2を取れるのは保証の限りではない。むしろ、減らすかもしれない。そうしたら改憲はできない。だとしたら、できるうちに改憲をやるのは、今年と来年しかないというのが、安倍さんたちの今のもくろみになっています。
 それで考えていると、工程表の発想が出てくると、今年中に改憲案を作って、今年中に他の野党に提案して、来年の国会で、憲法審査会で議論をして、来年の国会が6月ぐらいに終わるだろうから、国会会期末あたりでもって、国会で3分の2の多数をもって改憲の発議をする。そうすると、一番短くて60日、一番長くて180日。60日から180日の間に憲法改正国民投票をやるというのが今の法律ですから、6月に発議すると、8月から12月の間に国民投票がある。一番ぎりぎりは、総選挙をやらなきゃならない12月です。

発議できない情勢作れる

 しかし、恐らく自民党にしてみたら、総選挙と憲法改正の国民投票は一緒にはやりたくない、やはり国政選挙、党派選挙と、改憲国民投票を一緒にやると、他の野党も嫌がるだろう。自分たちも両方戦う、選挙を戦いながら、改憲も戦うなんていうのは、手がいくらあっても足りないから、できれば改憲投票はその前に済ませておきたいと考える。だから今一生懸命、馬車馬のように走りだそうとしているわけです。
 逆に言うと、私たちは今ここでがんばって、この夏の間に、「加憲は改憲だ。改憲以外の何ものでもない。9条3項を加えることは、海外に出ていく自衛隊、要するに、自衛隊員にとっても、そんなことはやりたくもないというふうに思っているはずなのに、それをもっとやらせる。そういう自衛隊にするんだ」ということを堂々と訴えて、それでもって、「そんな改憲はやめろ。やめさせる」と。
 こういう情勢をこの夏から秋にかけて作ることができれば、安倍さんのこのもくろみというのはすぐ狂ってきて、狂えば狂うほど、衆議院総選挙が気になって、簡単には改憲の発議ができなくなる、こういう状況をつくり出すことができる。このような情勢に来ている。

  感想文から  

  • 憲法の条文をまじえてのお話はわかりやすく、おもしろかったです。安倍政権の危険な動きは民主主義の根幹を揺るがすものです。私たちの暮らしは国が守るべきものではなく、自分で守らなければならなくなってしまったのでしょうか。(渋谷)
  • 加憲ということが非常に危険をはらんでいることを初めて知りました。97条と99条に支えられて98条が成り立っているというのも感動しました。(八王子)
  • 戦争法、共謀罪とひどい政治が続いている。政治家、官僚の資質、レベルが低くなっているので前よりまして「ウソ、ごまかし」を見抜く力を国民は持たなくてならない。(世田谷)
  • 自民党内からも反安倍の勢力を作ることです。強く声をあげたい。ともあれ、次の総選挙が勝負です。この国が良い方向に進むことを望みます。(新宿)
  • 国民全体で今一度、戦争放棄の意味、平和憲法の精神を考えなおす必要があるのではないか。(町田)
  • 共謀罪で、私たちの運動も厳しくなるのでしょうか。私にはまだわからないことが多くあります。(豊島)
  • 安倍首相の9条3項追加案が出された時に公明党の加憲論も考えていると思うが、同時に私はリベラル派(?)評論家の一部から「新9条論」が2015年安全保障論議の中で出されたことを思い出した。その当時これは危険だと思った。安倍首相はそのあたりも考えているのだろうか。(中野)

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