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○ 思い出の夏の匂い

 5月21日開催の教宣活動者会議で、通信員の皆さんに「思い出の夏の匂い」について書いてもらいました。

校庭とプールの匂い
スモッグで屋外活動中止に

 【練馬・とび・輕部利行通信員】私は昭和36年生まれの55歳です。「思い出の夏の匂い」で、すぐ頭に浮かぶのはプールの消毒剤の匂いと、スプリンクラーの散水による校庭の匂いです。「草いきれ」という言葉はあっても「土いきれ」はないと思いますが、そんな感じの匂いです。
 私が小学校5年生の時に起きた、「光化学スモッグ」による生徒の体調不良が全国にニュースとして流れ、進学した石神井南中学校は有名校になりました。ほかの公立校にはなかった空気清浄機とクーラーが全教室に設置され、他校の生徒からうらやましがられていました。しかし、いざスモッグ注意報や警報が出てしまうと、窓を締め切りスイッチON、その時から屋外での活動はすべて中止です。授業中の体育でも、すぐに教室に戻されます。休み時間のサッカーやドッジボールもそれっきりです。
 校内は涼しくて快適なはずなのに、皆、ガラス越しに外を眺め、校庭やプールの、とても良い香りとは言えないあの「匂い」を嗅ぎたがっていたように思います。

焼けたオイル臭に
思い出すツーリング

 【目黒・大工・佐藤義光通信員】夏の匂いといえば、焼けたオイルの匂いを思い出します。今から30年ほど昔、バイクに乗っていた頃、毎晩、バイクで走り回り、夏休みには遠出やツーリング、サーキットや峠に出かけていました。夏の暑い日にはエンジンオイルは焼けて、独特な匂いに包まれて、生活していたことを思い出します。
 今のバイクは水冷式が当たり前ですが、昔のバイクは空冷式がほとんどで、湯温が120度を超えることがよくありました。山の中でエンジンを止めると、シリンダーが冷えていく時、キンキンと音を立てて、同時にオイルの焼けた匂いに包まれて、当たり前の日課のようでした。
 それが今、生活のゆとりもなくなり、仕事に追われる日々、通り過ぎるバイクのオイルの匂いに懐かしさを感じるこの頃なのです。

猛暑のお詣りの途中
アイスきゅうりに生き返る

 【江戸川・配管・齋藤政晴通信員】私にとって思い出の夏の匂いは「アイスきゅうり」である。山奥にある神社にお詣りに行った夏の日、午前中には気温35度と猛暑の中、アスファルトの上を、神社を目指して歩いていた。水分補給したくても自動販売機がなく、神社に着けば、の思いで早足が喉の渇きを加速させていた。
 眩しい日差しの中で、目に飛び込んだのは1軒の漬物屋だった。よしずで日光を遮った中に置かれていた寿司樽。覗いてみると氷水が張ってあり、鷹の爪や刻んだ昆布とともに竹棒に刺したきゅうりが並んでいた。立て札には「アイスきゅうり」とアイスきゅうりを食べている河童のイラストが描かれていて、見ただけで涼を感じ、即購入した。
 味はきゅうりの浅漬けであったが、程よい塩加減と昆布の甘味、鮮やかな色をしたきゅうり、よしずから伝わる涼風が神風に感じ、その後、穏やかな気持ちでお詣りできた。

これぞ昭和の風物詩
昔懐かしのハエ取り紙

 【板橋・内装・成瀬晃一通信員】昭和40年代の夏の風物詩といえば何といってもハエ取り紙ではないだろうか。
 天井から独特な匂いがする細長い紙のようなものを垂らし、おびき寄せられたハエが粘着し、2度と逃げられないまま、お亡くなりになるというもの。
 捕獲されたハエを注意深く観察すると、頭、胸、腹に分かれた胴体、足が6本、翅(はね)があり複眼になっている。これはまさしく昆虫の特徴そのものを示していた。
 当時は八百屋、精肉店、魚屋だけでなく、一般家庭にも必ず使用されていた。そして現代、ごみ収集ルートの強化と下水道の整備によりハエは減り、それにともないハエ取り紙は姿を消していった。

疲れを癒す常備薬
サイダーに浮かぶ父の顔

 【墨田・塗装・林幸樹通信員】夏の日はなかなか暮れない。晩ごはんを待ちながらじゃれ合う小学生の私と弟の耳に、店の戸がガラガラとあけられる音が入ってきた。まもなく、ペンキだらけ汗だらけの父親が部屋に入ってきた。「ただいま」、我々が返して「おかえりな…」の時には、父の手は冷蔵庫を開けている。そして、冷えた三ツ矢サイダーのビンを取り出し、栓を抜いて一気にラッパ飲みする。部屋の中に淡い炭酸の音と甘い匂いが広がった。
 父は酒が飲めなかった。ビールもひと口で十分。だが、酒宴は日が変わる最後まで付き合い、話で皆を楽しませ、楽しまされ、帰ってきた。
 真夏の汗だくの体を、父は毎日サイダーで癒していた。「俺は皆みたいにビールを楽しみにできないからなぁ」と笑っていた。
 年を経て、私が家業を手伝うようになってから、炎天下の工事を終え、家に帰ると冷蔵庫にサイダーがあった。私は一気にラッパ飲みした。甘い味と匂いが口内に広がる。私は父に言った。「昔、親父がサイダーを本当においしそうに飲んでいたわけが良く分かるよ」「だろう、そうだろう」今までに見たことのない笑顔で父が答えてくれた。
 今でも、実物でもCMでもサイダーを見ると、あの時の父の顔が浮かんでくることがある。かすかな甘い匂いの思い出とともに。

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