FAX:03-5332-3972 〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図
メニュー

[連載] 主張と見解


第2214号 2017年7月1日付

解雇の濫用に道開くな

 一年半をかけて、解雇の金銭解決のしくみを議論してきた厚生労働省の検討会が5月29日、報告書をまとめました。制度の必要性について委員の合意が得られていないと認めながらも、「労働者の多様な救済の選択肢確保等の観点からは一定程度認められ得る」と説明し、労働政策審議会での検討を決めました。
 検討会では、過去の検討案や、労働者が原職復帰を求めずに金銭だけを請求する権利を労働契約法に設ける新たな案を検討。報告書はこの新たな案を「さらに検討していくべき課題が多い」と記しています。解決金に上限などの基準を設けることは意見が分かれましたが、反対意見も附して残されました。「使用者の申し立て」を認めるかは「現状では容易ではない課題があり、今後の検討課題とすることが適当」と今回の検討から外されました。
 労働者側の委員は「課題が山積し、技術的に困難。使用者申し立てが将来入る可能性があるだけでなく、解雇法制が大きく崩れる危険がある」(村上陽子連合総合労働局長)と述べ、検討の打ち切りを主張しました。
 解雇には厳格な規制が設けられ、法律で濫用を禁じています。原職復帰を求めた裁判では、事実関係を検証するなかで判決を得るか、金銭で解決するかを当事者の合意で決めてきました。
 新たな案では裁判せずに金銭解決を迫ることで解決金はこれまでより低く抑えられ、労働者は不利益を強いられます。さらに解雇の濫用に道を開くことは明らかです。新たな案は設計の仕方次第では解雇規制に大穴を開け、新たなリストラの道具になりかねません。労働者保護とは正反対の、悪質な使用者にだけ有利な政策であり、認めることはできません。

> 記事一覧へ戻る

電話:03-5332-3971 FAX:03-5332-3972
〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図