映画館
都営三田線白山駅A3出口
「かれこれ30年に」  ― レトロな雰囲気が抜群 ―

【文京・ガラス・大口勇夫記】
 「かれこれ白山で30年になるかな…」と『映画館』のマスターは話し出した。三田線、白山駅入口脇にひっそりとあるこの店は、かつて(五年ぐらい前まで)店内でフィルムの映画を上映していた。それがこのジャズ喫茶の店名の由来である。今はビデオ、DVDなどが普及し映画の上映は止めているが、アナログなスピーカーからモダンジャズを鳴らし、珈琲の香りと古めかしい掛け時計、古い映画のポスター、そして昔のミシン台をテーブルにした調度など、レトロな雰囲気が抜群だ。
 マスターは宮大工並の道具を揃え、テーブルランプの台や他の内装を自ら手作りして店内を飾る。そして、やはり圧巻なのは店内奥にどっしりと据えられたそのスピーカー。真空管アンプを通してそこから流れ出る演奏は、アーティストが狭い店内によみがえってきたかのようである。アート・ブレイキー、マイルス・デイビスなどの六十年代から七十年代を彩ってきたアーティストが中心だが、モダンジャズであれば年代を問わずに揃えているとのことだ。音の素晴らしさにつられてつい「このオーディオシステムに掛かった値段は・・・」と尋ねると、マスターは笑顔で言葉を濁し、その質問が野暮であることを我々にやさしく気づかせてくれた。
 『映画館』の先にはあじさい園で知られる「白山神社」があり、そこから10分程歩くと「小石川植物園」(東京大学植物研究所)がある。江戸幕府の薬草園で、小石川養生所もあったところ。当時からの井戸もある。森と植物が息づく憩いの空間がある。
 白山付近へおいで際は是非、植物園、白山神社へと足を伸ばし、その帰りにレトロな『映画館』で一息入れてみてはいかかだろうか。きっと日常のわずらわしさから一時開放されることだろう。
 『映画館』は16時から23時半まで開いています。