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深夜特急１香港・マカオ／沢木耕太郎

サイコロ賭博で大金が動く

　【本部・書記・姫路直樹記】学生の頃、ふと目に留まった一冊の本。世の中には自分の知らない世界が広がっている、衝撃をうけ外国に興味を持つきっかけとなった本があります。著者である26歳の青年が仕事も辞めインドのデリーからイギリスのロンドンまで、かき集めた所持金をドルに替え、バックパック片手に路線バスを乗り継いで旅をする旅行記です。
　ユーラシア大陸の各地を訪れ、現地の人や旅行者など様様な人との出会いと別れ、短期の旅行では体験できないような交流をし、時にはトラブルに巻き込まれたりしながら目的地を目指していきます。
　偶然購入した航空券が出発地であるインドに行く前に立ち寄りができるものだったため、思いつきで立ち寄った香港・マカオではサイコロの大小という賭博で大金を失いかけたり、ベナンで娼婦の館に宿泊することになったり、インドでは人の生と死に向き合い考えたりしながら旅を続けていきます。読んでいて、まるで自分がそこに行き、出会い、体験しているような錯覚に陥る感覚だったように思います。朝起きて「これをしなければならない」といった決められたことのない自由な世界で、今後の生き方やこれまでのことについてゆっくり考える時間を過ごしていきます。最初は不安でいっぱいだった旅人が、日日何かから解放され自由になる感情を覚えながら新しいことに挑戦するときの期待や不安と、乗り越えた時の達成感に似ていると思います。私自身、この本がきっかけで外国への関心が高まり、米国に語学留学しました。新潮文庫・497円（税込）