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[連載] 本の紹介

2016年12月20日第2195号


やこうれっしゃ/西村繁男

文字のない世界へようこそ

PHOTO 【本部・相田太郎記】本の詳細に入る前に、私は絵本には大きく2種類あると考えています。ひとつは「桃太郎」様に不変のストーリーを語り継ぐもの。もう一つは、ストーリーはさておいて、ページごとの絵に伏線やつながりを持たせ、子どもに「気づき」を促すもの。
 今回紹介する本は後者です。本の内容に移ります。上野駅は夜行列車に乗る人びとで賑わいをみせています。本が発行されたのは1980年、電光掲示板も自動改札機もありません。ホームにはキヨスクの代わりに雑誌や弁当をギッシリ積んだワゴン売店あり、人は長旅に備えて買い込みに余念がありません。出発した車内では、みな思い思いの時間を過ごします。少し遅めのお弁当、酒を酌み交わしたり、トランプに興じたり…。やがて列車は眠りの時間へ。寝台車、リクライニング、ボックスシートと等級により車両が違うため、特にボックスシートのみなさんは寝るのに苦労しています。目的地に近づくにつれて変化するまわりの風景も注目です。
 朝7時、列車は雪の積もる終点金沢へと到着します。駅では長旅を終えた乗客の笑顔や、お迎えの人との再会が描かれます。この絵本は文章が一切なく、すべてが絵だけで表現されています。それだけに、ページごとの情報量は他の絵本と比較にならず、読むたびに新しい発見があり、何を発見するかは、読み手により変わるでしょう。高速鉄道に追われて少なくなった夜行列車、古き良き昭和の一コマ。お子さんへの読み聞かせにも大人にも楽しんでいただきたい。福音書館店(本体900円+税)

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