建設業ではたらく仲間をサポート

FAX:03-5332-3972 〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図
メニュー

[連載] 本の紹介

2017年2月20日第2201号


京都ぎらい/井上章一

身分社会は現在も続いている

PHOTO 【本部・書記・大宮早紀子記】古都京都。長い歴史に裏打ちされた、優美な建築物、花街の賑わい、情緒あふれる夜の鴨川の風景、ミシュランガイドにのる料亭などなど。日本だけでなく世界中の人々が、強い憧れをもって京都観光にのぞんでいる。
 私は学生時代の数年京都市内に住んでいたが、奇妙な現実に直面した。それは、京都が強烈な身分社会で、現在も受け継がれていることだ。先祖代々平安朝から続く名家の友人は、京都市中心部いわゆる洛中以外の京都市内を「治安が悪く」「人が悪い」ので「絶対に住んではだめだ」といった。嵐山(ここは中心部でなく洛外)に代代住んでいる友人は「京都の南の人はよくない」といった土地の序列を数人の「京都人」や「京都府民」からきいて、よそ者の私は強い違和感をおぼえた。
 著者は、右京区の嵯峨出身で「洛中」人から差別されてきたと主張する。印象的な話は中京の老舗を営む家の令嬢である。彼女は、山科の男性から縁談話が来て、「かんにんしてほしい」「東山が西に見えてしまう」と愚痴るのだった。
 身分社会が続く原因の一つに、東京のメディアが京都、特に洛中の文化を取り上げ、もちあげることで、京都人を調子づかせているという。京都は生臭坊主といけずな京都人、差別される京都府民で構成される、気候通りの湿った都市である。
 なぜ私が京都に住み続けたいと感じなかったのか、この本はその答えとなっている。東京住住の皆様へ、京都の美しいだけでない一面をみていただきたい。(朝日新聞出版760円+税)

> 記事一覧へ戻る

電話:03-5332-3971 FAX:03-5332-3972
〒169-0074 新宿区北新宿1-8-16【地図