現場で骨折し入院
担当医と友人の励まし

武田良次
 バブル景気の末期、まだ町場仕事も忙しいときでした。私の現場は遠い所が多かっのですが、工事単価も良く働きがいがあり、疲れも気になりませんでした。安全に作業することは一番大切なことなのに、気にもせず夢中に仕事をしていました。
 1・5mくらいの足場の上で予期せぬ事故が起きた。転落事故で両足首を折ってしまったのです。平成3年11月2日、午後3時30分頃でした。鎌倉市の鎌倉山。高級住宅街で、この時間帯は人も車も少ない所。携帯電話で救急車に連絡、病院に運ばれましたが、土曜日とのことで、当直医に応急処置をしてもらい、翌日には自宅近くの病院に転院することになりました。
 自分の不注意による怪我で家族や仕事仲間、知人、友人など多くの人に迷惑をかけてしまいました。その時の主治医は女医の王東という若い先生で(現ソフトバンクホークス王監督の姪)、治るまで数回にわたる手術をしましたが、先生は「あなたが治るために頑張れば、私が責任と自信を持って治療します」と言ってくれました。
 あのときの先生の言葉は忘れることはできない安心感をあたえてくれました。それかという毎日は、治療を受けるのが楽しみな入院生活となり、 面会時間になると一日もかかさず妻が来てくれ、仕事仲間や知人・友人も見舞いに来てくれました。
 そのとき、友人の一人が「なぜこんな大怪我をしたのに知らせてくれなかったのだ、祝い事はもちろんだが、悪いことも知らせてくれ、二人の仲じゃないか。一日も早く働けるよう頑張れ」と言われた励ましの言葉は、忘れえぬ言葉となりました。
(村山大和)